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【地域のチカラ】

植樹、職人育成 10年後流通目指す 育て国産 奥静岡“オクシズ”漆

協議会の設立に先立ち漆産地を見学するメンバーら=岩手県二戸市で(静岡市提供)

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 国内消費量の大半を輸入品に頼っている漆の「地産地消」を目指し、静岡市の林業や伝統工芸の団体、行政機関が「オクシズ漆の里協議会」を設立した。人の手が入らなくなった市内山間部のオクシズ(奥静岡)で、荒れた山林や耕作放棄地にウルシの木を植えるとともに、漆を採取する職人も育成。十年後に地元ブランド漆を生産、流通させる構想を描く。 (伊東浩一)

◆自給率わずか3%

 林野庁によると、二〇一七年の漆の国内生産量は一・四トン。これに対し、国内消費量は四二・三トンで、国内自給率はわずか3%にとどまる。残りの大部分は中国などからの輸入漆に依存している。

 一方、文化庁は国宝や重要文化財(重文)の保存、修理には原則として国産漆を使用する方針を打ち出しており、今後は国産の需要増加が見込まれる。

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 静岡県内には、久能山東照宮(静岡市駿河区)や静岡浅間神社(葵区)など漆塗りの国宝、重文建造物が三十六棟あり、全国でも日光東照宮などがある栃木県(九十棟)に次いで多い。これらの修復のほか、駿河漆器など地元の伝統工芸品での活用も見込めることから、新しい産業として漆の生産に取り組むことにした。

 協議会は関係十団体で三月末に設立した。事業計画では、当初の三年間は、静岡市内山間部の梅ケ島、井川、清沢地区などに国の補助金を活用してウルシを植える。ウルシは日当たりや水はけが良い場所でないと育たないため、専門家の助言を受けながら進める。

 併せて、四年目以降はウルシの木から漆(樹液)を採取する「漆かき職人」の育成にも取り組む。地元や主産地である岩手県の職人に指導を仰ぎ、樹皮に刃物で傷を付けて漆を取る技術を身につけてもらう。十年間で漆の生産や流通体制を確立し、文化財や工芸品に活用することを目指す。

◆森の荒廃防止にも

 既に、静岡市内の林業者の有志数人が所有する山林でウルシの植樹を始めたほか、伝統工芸の弁当箱「井川メンパ」の職人が、オクシズ産の漆の使用に向けて地元の漆かき職人から技法を学ぶなど、自主的な取り組みも広がっている。

 協議会の事務局を務める静岡市中山間地振興課の多々良典秀さんは「漆の地産地消を通じて、森の荒廃防止や文化財を守る仕組みをつくりたい」と意気込む。

 

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