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【知られざる世界ランカー】

小さなエース 個性開花 コーフボール・安斎由紀

スピードあるプレーで日本代表を引っ張る安斎由紀=いずれも東京都東大和市で

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 スポーツの球技は男女別に行うのが原則だが、世界で唯一、男女混合チームでプレーするのがコーフボールだ。八月に南アフリカで開かれる世界選手権に臨む日本代表の安斎由紀(28)は、身長一四八センチの小さなエース。「男女が対等にプレーできるのが一番の魅力。日本で普及させたい」とコートを駆け回る。

 コーフとはオランダ語で「かご」を意味する。一九〇二年、バスケットボールを基にオランダ人教師が考案した。一チーム男女各四人の八人で、パスを回しながら高さ三・五メートルのコーフにボールをシュートし得点を競う。シュートは三百六十度どこからでも打てる。

 接触プレーや異性へのマークは禁止。ボールを持ってもドリブルはできず、ディフェンスが手の届く至近距離にいる時にシュートを打つのは反則になる。ルールには男女差や体格差を埋める工夫がちりばめられている。

 日本は世界選手権では過去一勝もしておらず、今回は初勝利を挙げて上位十六チームによる決勝トーナメントに進むのが目標だ。古木翔監督は「日本の持ち味はスピードあるパス回しで相手ディフェンスを崩す攻撃。安斎選手は相手を抜き去ることができ、シュートの精度も高い」と期待する。

 異性をマークできないことを逆手に取り、大柄な男性ディフェンスの中へ切り込んでシュートを放つプレーが安斎の真骨頂。「私の生命線はスピード。こんなに小さくても世界で戦えるところをアピールしたい」

 世界選手権の切符を勝ち取った昨夏のアジア・オセアニア地区大会では、日本チームで唯一、大会のオールスター選手に選ばれた。次は世界のオールスターを狙う。

 小学校から高校までバスケットボールを続け、大学ではサッカーに打ち込んだ。二十歳の時に起きた東日本大震災をきっかけに、ボランティア活動に関心を持ち、卒業後は二年間、青年海外協力隊の一員として中央アジアのウズベキスタンへ。

 異国の学校で体育授業の補助員を務め、放課後は子どもたちにサッカーや卓球を教えた。「ウズベキスタンでの経験は、スポーツの面白さを改めて認識させてくれた。自分も競技の第一線で活躍したいという思いが強くなった」。帰国後、二十五歳の安斎が選んだのが会員制交流サイト(SNS)で知ったコーフボールだった。

 「体験会に参加したところ、ポンポンとシュートが決まるので、周りに『頑張れば日本代表になれる』とおだてられ、その気になった」

 平均身長世界一のオランダ発祥らしく、コーフの高さはバスケのゴールネットよりも高い。バスケ経験者の安斎にとって、シュートが決まるのは楽しかった。何よりも「私の個性を発揮できるスポーツだと思った」という。高校時代は身長が低いからとレギュラーを外される悔しさを何度も味わった。

 「大の負けず嫌い。やるからにはとことんやる」をモットーに日本の中心選手となった今、中高生らにメッセージを送る。「背が低いとか、体格で劣っていることを理由にスポーツを諦めてほしくない」

 (敬称略)

シュートで狙うコーフ(黄色のリング)の高さはバスケットボールより高い3・5メートル

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◆熱きプレーヤー海外でも活動

 熱いコーフボーラーは他にも。元日本代表の信時盛人(のぶときもりと)さん(32)は商社マンとして2016年にタイに赴任すると、現地でコーフボールの普及に努めタイ協会を設立した。「当時世界67の国で普及していたが、五輪競技となる目安は75カ国。普及国が増えれば、自分にも五輪出場のチャンスが生まれると思った」

 18年12月には初のタイ選手権の開催にこぎつけ、10大学、20の中学・高校から計300人が出場するまでに成長した。

 日本代表の真柴啓輔さん(31)はコーフボールを学ぶため、15年11月から18年6月までオランダに移住し、南ホラント州パーペンドレヒトのクラブチーム「PKC」で活動。「オランダの選手は5歳の頃からコーフにシュートを打ち続け、360度を使った動きを体に染み込ませている」と強さの秘密を体感した。

 オランダでは最高峰のプロリーグ(10チーム)の傘下にピラミッド型に各リーグが連なる。PKCの下部にも当時シニアだけで15チームあった。

<あんざい・ゆき> 小学生からバスケットボールを続け、東海大相模高校時代は神奈川県大会ベスト16。東海大では女子サッカー部の1期生として、初代主将も務めた。2015年からコーフボールを始め、17年から日本代表。コーフボールクラブ東京所属。148センチ、45キロ。川崎市出身。28歳。

<コーフボール> 国際コーフボール連盟には69カ国・地域が加盟。オリンピック競技入りを目指している。最強国オランダに次いで台湾が世界ランキング2位と、アジアのレベルは高い。日本では1991年から普及が始まり、現在は首都圏など9都府県で約150人がプレーする。世界ランクは24位。

 文・牧田幸夫/写真・淡路久喜

実戦形式の練習でシュートを放つ

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