東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 知られざる世界ランカー > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【知られざる世界ランカー】

“攻”“守”絶妙バランス ビーチテニス・柴山葵 大塚絵梨奈

国内女子最強ペアの大塚絵梨奈(左)と柴山葵=いずれも横浜市金沢区の海の公園で

写真

 テニスとビーチバレーの要素を組み合わせたイタリア生まれのビーチテニス。日本に上陸して10年余りだが、初心者でも簡単にラリーが楽しめ人気上昇中だ。競技会も盛んで、女子最強ペアの大塚絵梨奈(29)と柴山葵(27)の合言葉は「世界一を目指す」−。

高い守備力でゲームをコントロールする柴山葵

写真

 ペアを組んで二年目の昨年十月、念願の全日本選手権優勝を果たすと、今季は主要大会六連勝中と国内ツアーは無敵。初めて日本代表にも選ばれ、六月に世界選手権(イタリア)、七月に国別対抗戦(ロシア)に出場。世界のレベルを肌で知り、「まだまだ力不足。世界の層は厚い」(大塚)と闘争心に火が付いた。

 ビーチテニスはダブルスが主流で、コートの大きさはビーチバレーと同じ縦八メートル、横十六メートル、ネットの高さは一・七メートル。「パドル」と呼ばれるラケットでボールをノーバウンドで打ち合う。スコアの数え方はテニスと同じだ。

 大塚、柴山ペアの強みは攻守のバランスが優れていること。柴山がボールをネット近くに落としたり、後方へ山なりに打って相手の守備を揺さぶって崩す。甘く浮いたチャンスボールを一六八センチの大塚が打ち込む。

 日本代表の相沢幸太郎監督は「柴山は守備力が高く、ゲームをコントロールできる。大塚は高さを生かしたサーブやスマッシュが魅力」と話す。ただ「プレーの精度をもっと上げないと世界では勝てない」とも。最新の世界ランキングは、ともに三十八位だ。

 三十二組が出場した世界選手権は一回戦で敗退。しかし、国別対抗戦で収穫があった。ペアの一人が世界王者だったドイツ戦で、6−2、5−7、10−12と、敗れたものの大接戦を演じた。「世界チャンピオンを苦しめ、自分たちのプレーに手応えを感じた」と口をそろえる。

力強いサーブを決める大塚絵梨奈

写真

 二人はともに十歳の頃から硬式テニスを始めたが、そのテニス人生は対照的だ。学生王者を目指した大塚に対し、柴山は愛知県内の強豪大学に進んだものの、情熱をなくし「二年生の終わりで退部させられた」と挫折。そんな時期にビーチテニスに出合った。

 柴山は「テレビで見て絶対に面白いと思った」と、パドルを購入し、名古屋から夜行バスに乗って千葉で行われた体験会に駆けつけた。「遊び以上に楽しいことを見つけた」と夢中になり、二〇一四年の卒業後は上京して真剣に競技と向き合った。

 大塚は社会人二年目の一六年夏、遊びに行った海でビーチテニスに誘われた。翌週には試合に出場。対戦相手は、五十歳代の女性ペアだった。「砂の上をいいように走らされ、おばちゃんに、こてんぱんにやられた」。悔しさから練習を始めたところ、戦術的な面白さがあることを知った。

 縁あって二人は一七年四月にペア結成。持ち前の明るさで互いの長所を認め合って成長してきた。日本代表経験のあるメンタルトレーナーの中嶋進さんは「精神状態が出やすい競技だが、大塚選手はプレッシャーに強い。柴山選手は少し繊細な部分があるが、はまったときのパフォーマンスはピカ一」と期待する。

 十月にはカタールのドーハで開かれる第一回ワールドビーチゲームズに出場する。世界大会で日本選手初の「表彰台」を狙う。 (敬称略)

◆ビーチテニス ここに注目

 ■セルフジャッジ

 審判がおらず、選手は自分側のコートの判定に責任を持つ。ボールが明らかにコートの外側に落ちたら「アウト」だが、ライン上付近など判定に迷った時や、ボールを見失ったときは「イン」「グッド」で、相手有利の判定をしなければならない。審判のいないスポーツにはゴルフ、カーリング、アルティメットなどがある。

 ■メンタルスポーツ

 サーブは2本打てるテニスと違い、1本。リターンが難しいネットに当たって落ちる打球も多い。メンタルトレーナーの中嶋さんは「相手のラッキーショットで失点するケースも多く、がっかりしてマイナス感情が出ると、流れを失う。ゲーム中は流れの変化が大きく、精神面のコントロールが勝敗に深く関わってくる」と話す。

<ビーチテニス> 1990年代にイタリアで生まれ、世界60カ国以上で行われている。2008年から国際テニス連盟(ITF)の正式競技となり、各地で国際大会が開催されるようになった。日本では07年に鵠沼海岸(神奈川県藤沢市)から普及活動が始まり、10年に日本テニス協会(JTA)が正式採用。年間約30のITF、JTA公認大会が開かれている。国内競技人口は約1万人。

<おおつか・えりな> 松山市出身。筑波大在学時はテニスの全日本学生選手権ベスト8。大学院でスポーツバイオメカニクスを学び、2015年スポーツアパレルメーカーのゴールドウイン入社。17年から国内外のビーチテニスツアーに参戦中。仕事は水着などSpeedoブランドの商品企画を担当しており「自ら企画したウエアを着て世界一になりたい」。世田谷区在住。

<しばやま・あおい> 津市出身。テニス推薦で東海学園大(愛知県)に進んだが、2年でテニス部を退部。14年の大学卒業後は上京し、ビーチテニス中心の生活を送る。17年にはテニスの全国レディース大会で千葉県代表の一員として日本一。「ビーチテニスのおかげで足腰や体幹が鍛えられ、テニスも強くなった」。千葉市の美浜テニスガーデン勤務。同市在住。

 文、写真・牧田幸夫

 

この記事を印刷する

PR情報