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スポーツのしおり

(41)「心の温度」 わたしからみんなと

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 人から好かれたい。でも、実際は難しい。ヒントを与えてくれるのは、10月に引退した卓球女子の福原愛さん。競技を始めた3歳から、これほど長期間、多くの人たちに愛され続けた選手はいないだろう。

 卓球のときは集中力が高まり、周りが見えなくなる。しかし、一度コートを離れれば、周囲にこまやかな気遣いをする。大切にしているのは「心の温度」だという。それは「相手を思いやる度合い」と言い換えられるかもしれない。

 アスリートは周囲に支えられ、一見、選手が主役に映る。だが、それを良しとはしなかった。

 「スタッフさんがいるからこそ、チームがある。『みんなが私に』ではなく『私からみんなと』。スタッフさん、選手同士、みんなの心の温度が同じになれば、チームはより強くなれる」

 求めるのではなく、まずは自分から心配りを。初めて団体戦の主将になったときには12歳年下の伊藤美誠、平野美宇が伸び伸びプレーできるよう、積極的に声を掛けた。海外遠征や合宿中に選手やスタッフの誕生日会を内緒で開き、驚かせる。「どうすれば相手が喜ぶか。そういうことを考えるのが楽しい」。サプライズが大好きだった。

 2016年2月、リオデジャネイロ五輪を半年後に控えた寒い日。インタビューのため、福原さんと待ち合わせをした。約束の時間を少し過ぎたころ、息を切らして走ってやってきた。

 「何がいいのかお店で考えていたら、つい遅くなってしまって。すみません」

 手渡されたかわいらしい紙袋を見て、ドキッとする。この日は2月13日。バレンタインデーの前日だった。40代半ばの記者があたふたする姿を見て、福原さんはいたずらっ子のように笑っている。「ああ、こういうことか」と理解した。

 「愛」という漢字の真ん中にある「心」。周囲から愛されるには、心の温度を上げよう。よし、来年から! いや、今すぐ始めなくては。

 文・森合正範/写真・隈崎稔樹・共同/デザイン・高橋達郎

 

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