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【鉄学しましょ】

「塩狩峠」とブレーキ 土屋武之さん

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 真空ブレーキとは、列車に引き通された管の中を真空にして大気圧との差でシリンダーを動かし、車輪を締めつけて止める方式だ。イギリスで考案され19世紀に広まった。

 これに対し、空気ブレーキは管内に込めた圧縮空気を抜いて、圧力を緩めるとブレーキがかかる。万一ブレーキ管が破損したら空気が抜け、自動的に列車が止まる。アメリカで発明され、安全面で優れているため、今では世界中のほぼすべての車両が装備している。

 三浦綾子の小説「塩狩峠」のラストシーンは、1909年に宗谷線塩狩駅=写真=付近で実際に発生した事故を基に描かれた。旭川行き列車の客車の連結器が外れ、峠の麓へ向けて暴走したが、乗り合わせた鉄道職員が身をていして止め、自らは殉職したが惨事は防いだ。空気ブレーキだったらブレーキ管がちぎれてすぐ止まったはずだが、このころの日本は真空ブレーキが主流だった。

 主人公の永野信夫は最初、北海道炭礦(たんこう)鉄道に入社した。この会社はアメリカの技術指導を受けたため、空気ブレーキを採用するなど先進的な鉄道であったが、06年に国が買収し、国有化後は他の路線と同じ真空ブレーキが導入された。彼はそのまま勤め続けたのだが、もし私鉄のままだったら、死なずに済んだことだろう。

 

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