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【タイムライン】

「自分で考え、食べる選手に」 サッカー日本シェフ西さん いわきFC総料理長に 

「いわきFCステーション」の調理場で仕込みをする西さん

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 「サムライブルーの料理人」として知られるサッカー日本代表の専属シェフ、西芳照さん(57)が、14日に開幕した東北社会人リーグ1部、いわきFC(福島県いわき市)で、選手の食事を担当する「総料理長」として腕をふるっている。「食」を通じたアスリートの体づくりや、チームへの影響などを聞いた。 (上條憲也)

 クラブが掲げるビジョンの一つが「日本のフィジカルスタンダードを変える」。選手は筋トレを欠かさず、屈強な身体と力強いプレーの確立を目指す異色のチームが、いわきFCだ。

 西さんは、いわき市内のグラウンド脇に2月に開設された選手用の食事会場「いわきFCステーション」の総料理長に就いた。これまで選手は、業者による選手用の食事をクラブハウスに近い社員食堂でとっていたが、会場内の調理場で作られたものを練習後などにすぐ、ビュッフェ形式で食べられるようになった。現在は昼と夜で、今後は朝食もここ。ただ「体づくり」のためといっても献立は特別なものではない。

 大切なのは「選手は自分のために考えながら食べる」と西さん。ご飯に魚の煮付け、ステーキ、冷ややっこにサラダ…。テーブルには地元食材を使った料理が並び、カロリー数や脂質を表示した紙を参考に、各自が適量を皿に盛る。食べる前にスマートフォンで撮影し、専用アプリに記録。個々に応じて摂取量に過不足があれば、栄養士から助言を受ける。

 2004年から日本代表の海外遠征に同行している経験を、いわきFCに伝えたいという。間近で見てきた歴代のトップ選手は「食」への要望も多様だったそうで、「選手寿命の長い人を見ると、サッカーがうまいのはもちろん、自分の体を気遣っている」。

 32歳の長友(ガラタサライ)からは「青魚を1日2回は必ず出してほしい」。長友が慕い、40歳で現役の中村俊(磐田)は日本代表当時、塩こしょうとオリーブ油をかけた山盛りサラダを主食の前に欠かさなかったという。ワールドカップ(W杯)ロシア大会後に代表を引退した本田(メルボルン・ビクトリー)は、栄養豊富とされるパプリカ料理を要望した。食への高い意識は、若い代表選手たちに脈々と受け継がれている。

 将来のJリーグ加盟を目指すいわきFCはトップチームの下に高校や中学年代のアカデミーがあり、トップ同様に食事会場を利用する可能性もある。西さんはメニューを考えながら「選手が活躍するために必要なことを伝えていければ。食のスタンダードをここで確立したい」と話す。

カロリー数や脂質などの目安を記した選手用のメニュー表

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◆一問一答

 −開放感のあるいわきFCの食事会場の雰囲気はいい。

 「栄養面はもちろんだが、おいしいことが当たり前であればコミュニケーションの場にもなると思う。寒い時期は鍋を囲んだり、今後は選手にも料理や仕込みをしてもらおうかと思っている」

 −食を通じて交流が深まるのを日本代表で見てきた。

 「最初に感じたのは(優勝した)2004年夏のアジア・カップ(中国)。それ以前は選手たちは食後にパッと部屋に戻っていたそうだが、チームスタッフから『西さんが来てから食後も部屋に戻らない。あれが勝利の要因だろうな』と言われた。ああ、食事ってそういうことなんだなと」

 −以降、そのスタイルが定着した。

 「昨年のW杯ロシア大会の時は(直前に監督交代があり)周囲に厳しい目で見られ、選手たちは『どうにかしなくちゃいけない』と思っていた。必然的に会話の時間が長くなっていたが、乾さん(アラベス)や香川さん(ベシクタシュ)は(ビュッフェ形式の料理を)皿に盛りながら『オレがこう動いたらおまえはこう動けよ』と話していた。長谷部さん(フランクフルト)や川島さん(ストラスブール)も若い選手の間に入ったり席を移動していた」

 −食卓がチームの重要な場になる。

 「(日本代表では)選手たちが今までの経験から、チームがバラバラにならないためにどうしたらいいかと食卓をにぎやかに囲みながら、みんなでたどり着いたようだ」

 <にし・よしてる>1962年、福島県南相馬市生まれ。京懐石の料理店などで修業し、97年開設のサッカー施設「Jヴィレッジ」の総料理長だった2004年3月から日本代表の専属シェフ。今季はJ1浦和や川崎などが挑むアジア・チャンピオンズリーグの遠征にも同行する。17年にいわき市内にオープンしたいわきFCのクラブハウス併設商業施設内では、直営店「NISHI’s KITCHEN」を構える。

 <いわきFC>米国のスポーツアパレル「アンダーアーマー」の日本総代理店ドーム社が設立した運営会社が2015年、福島県社会人リーグに所属していた地元クラブの運営を引き継ぎ、創設。毎年昇格しながら18年に東北社会人リーグ2部(南)を制し、今季は同1部。

午前の練習後に「いわきFCステーション」で昼食をとる選手たち=いずれもいわき市で

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