東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 東日本大震災 > 長久保宏美のリポート福島 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【長久保宏美のリポート福島】

洗練されたワイン求めて 障害ある地元スタッフといわきで醸造所

ワインショップからブドウ畑を見ながら話す四家麻未さん=いずれも福島県いわき市で

写真

 福島県いわき市で高品質のワイン造りに挑むワイナリーがある。震災と原発事故の影響で一時はブドウ作りが危ぶまれたが、ひたすら洗練された味を求めて研究を続けた父と娘が、障害のある地元スタッフらとともにブドウを栽培し、今では年間で二十五種類、一万八千本のワインを醸造するまでに育った。

 市中心部から車で十五分ほど西に走った、太平洋を望める小高い丘の上に、「いわきワイナリー」のブドウ畑とワインショップがある。

 マネジャーの四家麻未(しけあさみ)さん(31)が収穫の始まったブドウ畑を案内してくれた。

 「これはマスカットベリーAという種類で、あの建物の中で醸造を行います。もう熟しているから、そのまま食べてみますか」。ブドウを皮ごと一つ口に入れると甘酸っぱい味がした。

 ワイナリーを運営するのは、認定NPO法人みどりの杜(もり)福祉会。理事長の今野隆さん(63)は四家さんの父だ。いわき市で会計事務所を経営する今野さんには、障害のある妹がいた。一定の年齢以上になると一般企業での雇用が難しく、家の中にこもりがちな障害者が多いことを知り、住み慣れた地域で各自のペースで作業ができるワイン造りを思い立ったという。

 二〇〇八年に同県広野町でブドウ栽培に乗りだし、翌年にNPO法人を設立。一〇年にはいわき市の耕作放棄地の畑(約〇・五ヘクタール)でもブドウ栽培をしようと開墾を始めた。しかし一一年三月、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が発生。広野町でのブドウ栽培を断念した。

 今野さんらはここであきらめず、市内に別のブドウ畑(約一・四ヘクタール)を確保した。一五年三月には果実酒醸造免許を取得し、本格的なワイン造りがスタートした。

 今野さんと地元のスタッフは山梨県甲州市勝沼町のワイナリーなどに何度も通い、醸造技術を磨いた。障害のあるスタッフら約二十人は、ブドウ畑の剪定(せんてい)や果汁を搾る作業を担う。

 「最初、はさみが使えなかったスタッフも、今ではブドウの種類ごとに剪定ができるようになった」と今野さんはほほ笑む。四家さんは「いかに洗練された味にするか、そこが難しい。いつかはサミットの夕食会で出されるようなワインを造りたい」と話す。

 いわきワイナリーは十九、二十の両日、同市好間のワイナリーガーデンテラス&ショップを会場に収穫感謝祭を行う。グラスワイン三百円(税込み)。JR常磐線いわき駅から会場まで無料のシャトルバスを運行する。問い合わせはワイナリーガーデンテラス&ショップ=電0246(36)0008=へ。 (福島特別支局長)

ブドウ畑には収穫前のマスカットベリーA種が実っていた

写真
 

この記事を印刷する

PR情報