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【長久保宏美のリポート福島】

原発事故避難者の住宅問題 丹波史紀さん(立命館大准教授)に聞く

福島からの避難者の生活実態に関する調査結果について話す丹波史紀准教授=福島市で

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◆生活再建、世帯ごとの支援を

 東京電力福島第一原発の事故で、福島県内の自宅から避難した世帯に対する応急仮設住宅の提供は、大熊町と双葉町を除き2020年3月末で原則終了する。いまだ4万人以上の県民が避難する中、国や県は避難者にどう対応すべきなのか。新潟県が昨年公表した避難生活に関する総合的調査報告書のとりまとめに加わった、立命館大学の丹波史紀准教授(社会福祉論)に話を聞いた。 (福島特別支局長)

 新潟県は東電柏崎刈羽原発の再稼働の前提として、福島第一事故の徹底的な検証を進めている。一七年秋には、原発事故が住民の健康と生活に及ぼす影響を検証するため約千二百世帯の避難者を対象にアンケートを実施した。

 福島の事故で福島県内などから新潟県内に避難し調査時点で居住していた世帯と、かつて避難したことがあり、調査時点では他県に住んでいる世帯も対象とした。

 原発事故前の居住地が避難指示区域の内か外かを問わず、避難者に住居形態、職業や収入の変化を質問。丹波准教授が最も注目したのは、収入の変化=別表参照=だ。

 全体では月の平均世帯収入は避難後、十万五千円減った一方、支出は避難前とあまり変わらない。丹波准教授は「区域外からの避難者の大半は預貯金を切り崩してやりくりしているのが実態」と話す。

 持ち家率は、全体で避難前に比べ半減していた。「区域内からの避難者では63%から32%に減少。区域外からの避難者も過半数が自費によるアパートなど賃貸住宅に住んでいた。区域外避難者に住居費の負担は大きい」という。

 世帯主の就業形態の変化は、正規職員や自営業者が減少し、非正規職員や無職が増加した。特に区域内は無職が最多の50%を占める。区域外は非正規職員が35%で最多。報告書は「区域内外の違いは東電からの賠償金や住宅支援の有無が影響しているとみられる」と分析している。

 「生活再建ができていないというのが結論。特に避難指示区域外からの避難者は経済的に困難な状況に置かれている」と丹波准教授。福島県は東京都内の国家公務員住宅に未契約で住む避難者を提訴する準備を進めるが、「追い出せば問題は解決するのか。国も前面に立って個別の世帯ごとに生活再建を支援すべきだ」と話している。

 たんば・ふみのり 立命館大学産業社会学部准教授。1973年愛知県生まれ。2004〜17年、福島大学行政政策学類准教授。東日本大震災発生と原発事故後、2回にわたり福島県双葉郡の住民実態調査を実施。今年6月、清水晶紀福島大学准教授と「ふくしま原子力災害からの複線型復興」(ミネルヴァ書房)を出版。

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