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【長久保宏美のリポート福島】

リアルな大熊伝えたい 役場の若手職員 手書き情報紙

次号のタイトルカットの色について話し合う喜浦遊さん(右)ら

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 福島県大熊町は四月、新しい町役場や公営住宅が立地する「大川原地区」など一部地区で避難指示が解除された。町内に住む町民はまだわずかだが、役場の若手職員が今、手書きの情報紙「大川原LIFE」作りに取り組んでいる。住んでいる人が感じるリアルな生活実感を、町外に避難している町民に伝えるためだ。

 今月五日夕、役場で情報紙の編集会議が開かれた。参加したのは町教育総務課の喜浦遊さん(38)、議会事務局の佐藤由香さん(29)、会津若松出張所の後藤聡子さん(39)。三人の他、メンバーには企画調整課の男性職員も名を連ねる。

 今年五月、役場の若手職員有志で構成する「ふるさと未来会議」メンバーから、「大川原での生活が始まるタイミングで、この地域の日常を実際に町にかかわる人の視点で伝えたい」という提案があったという。

 喜浦さんは「震災の悲劇でもなく、復興の美談でもないリアルな生活を伝えることで、避難先にいて定住先を迷っている町民が、大熊町での生活を想像しやすくなったり、これまで町に関わりない人が興味を持ってくれるきっかけになればということです」と話す。

 情報紙はA4判裏表カラー。タイトルカット部分以外は手書きだ。十月号が初刊で月一回約五千部発行。町の広報紙に同封するほか、地域の商店などに掲示してもらっている。

 初刊号の表(おもて)面は大川原地区に住む佐藤さんが担当。記事は「大川原あるある」。「生活必需品は買い置きは必須」「平日の夜は宅飲みで決まり」「野生動物との遭遇」…などの話題が並ぶ。

 「普通に言えば、商店の閉店時間が早く、近くに居酒屋などの娯楽がない。夜、道でイノシシが平気で寝ている、ということなんですが、それを明るく書いてます」と佐藤さんは笑う。

 十一月号の表面は喜浦さんが執筆。タイトルは「うちのナスは食べられるか」。喜浦さんの畑で、近くの公営住宅に住む男性が野菜を栽培しているのだが、ある日、畑にナスが転がっていた。聞けば「放射線が出た」(原文のまま)といううわさ。早速、喜浦さんが役場で放射能濃度を測定した結果、検出限界値未満だった事実を紹介。「野菜に限らず、不安を感じたら測定してみます。住めないと悲観することなく、ここでの普通の生活を一つ一つ開拓している気分です」と記した。

 取材は分担し、本業に差し障りがないよう配慮。メールで打ち合わせを済ませて編集作業に入る。十二月号は「大川原でネイルアート」。仮設店舗で営業中の雑貨店の店長がネイルアートの施術を始めたという話題だ。

 喜浦さんは「泣いてもいなければ、怖がってばかりでもない。普通の生活を自分たちの言葉で伝えたい」と話した。 (福島特別支局長)

イラストも手描きで親しみやすさを意識しているという=いずれも福島県大熊町で

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