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【2020東京五輪】

<東京パラリンピックへの道> (6)「ユニバーサル・ラン」

児童たちに自らの脚に触れてもらう池田樹生さん=いずれも千葉県船橋市の三山小で

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 義足に触れて、義足を身に着けてパラスポーツを知り、障害者への理解を深めてほしいと、小学生を対象にしたスポーツ義足の体験型授業「ユニバーサル・ラン」が全国で行われている。開催校はすでに百校を超え、「子供たちが多様性を理解するきっかけになれば」という願いが込められている。

 年齢や身体能力にかかわらず、すべての人に適合するユニバーサルデザインの製品づくり、普及に取り組む総合住宅設備メーカー「LIXIL(リクシル)」(本社・東京)が義足メーカーと提携して昨年四月から開催。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の公認プログラム。参加校は百十四校、体験児童は八千五百十二人を数える(十八日現在)。講師は現役のパラアスリートが務める。

 千葉県船橋市の市立三山小学校で行われた授業を取材した。五年生の総合学習の授業で約七十人の児童を対象にユニバーサル・ランを行った。

 「池ちゃんに質問がある人は手を挙げて」。司会者の呼びかけに、体育館に子供たちの声が響き渡る。「義足を使っていて不便なことありませんか」。池ちゃんはにこにこしながら「特にありません。何でもできますから。でもお風呂に入るときは外しますよ」と答える。

 池ちゃんは中京大スポーツ科学部四年、池田樹生(みきお)さん(21)。愛知県豊田市出身。生まれついて右手がひじから先、右足がひざ下からなく、左手にも機能障害があり、義足を使用している。パラ陸上短距離のアスリートで、昨年ロンドンで開かれた世界パラ陸上選手権大会では四百メートルリレーでアンカーを務めて三位に入ったほか、アジアユースパラでは優勝経験も。四百メートル(T64)の日本記録保持者でもある。

 池田さんは着けていた生活用の義足を外して右脚の先を子供たちに触れさせ、義足を持ってもらい実感させる。次々に脚にタッチする子供たちは「ぷよぷよしている」と驚いた様子。

 続いてスポーツ義足を体験した。池田さんから「目線は前に」「体を伸ばして太ももは上げて」とアドバイスを受けながら、片足に着けてマットの上を跳びはねる。子供たちは「トランポリンみたい」「いつもと感覚が違う」と大騒ぎ。「義足の人の気持ちが少しはわかった」「これでスタートダッシュするのは大変だと思う」と次第に障害者への理解も生まれたよう。

 石川康二校長(56)は「何かを得て、普段の生活で障害者を手助けできるような子供に育ってほしい」と話し、LIXILの担当社員、水越雅美さんは「障害者と普段触れ合うことがあまりなくて、最初は障害者に『暗いんじゃないか』という先入観をもつ子供たちもいますが、体験を通じて思い込みがなくなり、意識が変わります」と訴える。

 二〇二〇年東京パラリンピックでは百メートルでの出場を目指す池田さんは「子供たちとのコミュニケーションを通じて、障害者を知って、『義足は眼鏡のようなもの』となじんでもらえたら」と目を細めていた。(加藤行平)

池田さん(中央奥)の指導を受けて、スポーツ義足を身に着けて体験する児童たち

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