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【2020東京五輪】

<東京パラリンピックへの道>(17)「歩導くん」開発 トーワと錦城護謨 体験基に安心、屋内の道しるべ

凹凸のある線状ブロック(左)に対し、「歩導くん」はなだらかに高さがある。表面にさまざまなピクトグラム(絵文字)を印刷することができる=東京都港区の錦城護謨東京支社で

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 視覚障害者やお年寄りが安心して歩けるように−松江市の視覚障害者が自らの体験を基に屋内での誘導マット「歩導(ほどう)くん」を考案した。ゴムの専門メーカーも協力し、今では全国千カ所で導入されている。関係者は「来年の東京オリンピック・パラリンピックの会場にも設置されて、パラアスリートらの一助になれば」と期待する。

 考案したのは松江市の電気工事会社「トーワ」の杉原司郎会長(79)。五十二歳の時に緑内障を発症。五十九歳で「多少でも見えるようになれば」と手術したが、現在は左目は全く見えず、右目はかすみがかかったようにぼんやりと見える程度。段差は分からず、白杖(はくじょう)を使用している。

 病室からトイレに行くのもルートが分からず、凹凸のある誘導マットを床に設置するよう病院側に求めた。だが、院内はストレッチャーなどの移動があり、段差がある線状ブロックなどの設置は難しかったという。この体験が「歩導くん」開発の原動力になった。

 点字・線状ブロックは屋外での使用が多い。視覚障害者の強い味方だが、お年寄りがわずかな段差につまずいたり、足腰が弱いお年寄りが利用する押し車は段差のために引っ掛かることも。「視力障害者やお年寄りが安心して歩ける道しるべができないか」

 目を悪くするまで、趣味は夫婦で山歩きすることだった。大山(鳥取県)や中国山地の山に登った際、踏みしめた「落ち葉の感触」を体は覚えていた。「この感触を再現したい」。試行錯誤を重ねてたどり着いたのがマット状の「歩導くん」だった。中央部を柔らかく、へりは段差がなくフラットに、白杖でたたいたときにマット上とマット外では感触や音が異なり、容易に判別できる。二〇〇二年から本格的に開発に着手。翌年完成した。

 提携したのがゴム製品の専門メーカー「錦城護謨(ゴム)」(大阪府八尾市)。新しい事業の柱に「福祉」を挙げていた三代目社長の太田泰造さん(46)は杉原さんに共感。「障害者らが付けてほしい所にない。より使いやすく良いものを適切な場所に」と〇七年にタイアップ。一五年からは製品開発・製造に協力。その後モデルチェンジを重ね、現在は「歩導くんプラス」と「歩導くん ガイドウェイ」の二種類を共同で販売、全国的な販売も続けている。

 現在の製品は厚さが一番薄い所で一ミリ以下、厚い所は七ミリで、地面との角度はわずか三・五度。ほぼ正方形のマットを何枚もつなぎ合わせて両面テープで床に貼り付けることができる。本格的な工事は不要で素人でも設置できるという。

 全国の公共機関、大学、空港など約千カ所で導入されてきた。来夏の東京オリンピック・パラリンピックに太田さんは「ぜひ貢献したい」と訴える。「パラリンピックの選手は競技に集中したい。しかし更衣室から会場への道順や、競技会場からトイレに行くのに、その道中を気にしなくてはいけないのは『アスリート・ファースト』に反するのではないか」と指摘。「仮設の会場でも簡単に設置できて、撤去するのもはがすだけ。選手が余計な気を使わず大会に臨める環境づくりに寄与したい」と話している。 (加藤行平)

「落ち葉を踏みしめる感触」を求めたゴム製の「歩導くん」。つえの先端や足の裏でゴムの感触が分かり、方向を確認しながら歩くことができる(錦城護謨提供)

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