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【2020東京五輪】

<東京パラリンピックへの道>(18)全盲のシンガー・ソングライター 栗山龍太さん(横浜市) 共に認め合い輝ける応援歌

3代目パートナーの盲導犬アンジーと栗山龍太さん。CDデビューしたころは路上ライブもよく行っていたという=横浜市で

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 三月初め、東京都渋谷区の都立広尾高校体育館であった「渋谷運動会」。障害のある人もない人も一緒にボッチャやリレーを楽しむイベントの開会式で、栗山龍太(りょうた)さん(43)=横浜市=は伸びやかな歌声を披露した。「共に認め合えた時 それが僕らのリアルビクトリー」。パラリンピックを目指すアスリートを応援しようと作詞作曲した「リアルビクトリー」を歌い上げ、応援団含め二百六十人が集まった会場から喝采を浴びた。

 栗山さんが「全盲のシンガー・ソングライター」として活動を始めてから十年になる。平日は横浜市立盲特別支援学校の高等部専攻科ではり・きゅうを教える教諭。この一年は休日にあちこちのイベントに呼ばれ、この歌を歌ってきた。「障害があっても、自分の輝ける場所を目指す重要性に気づいたんです。それまでは、パラリンピックをオリンピックと分けるのは壁を作っていると考えていた」

 大阪府出身の栗山さんが緑内障で失明したのは十一歳の時。家庭の事情で中学校の途中から十八歳まで児童養護施設で暮らした。はり・きゅうの教員を育てる筑波大学理療科教員養成施設で資格を取り、二〇〇一年に横浜市に採用された。

 中学生のころから多彩なジャンルの音楽を聴き、曲作りをしていた。自分の病気、施設での生活、さまざまな苦しさの中で、音楽が救いだった。淡く夢見ていたシンガー・ソングライターを目指そうと奮起したのは、結婚し子どもを授かった〇九年。友人を介して知り合った音楽プロデューサーにより一〇年、盲導犬と暮らす自身の生活などを歌った初のCD「僕の取り柄(え)と盲導犬」をリリースした。

 神奈川や東京を中心にイベントで歌い、一四年にはCDの三千枚完売を機にアルバムも出した。だが一五年にパートナーの盲導犬が引退し、自身も二人の息子の子育てに追われる中、いったん活動は休止状態になる。東京パラリンピックに向け世間が盛り上がり始めていたが、当時は特別な気持ちはなかった。

 盲導犬がおらず、白杖(はくじょう)で歩いていた一六年のある時、横断歩道を渡った先で、点字ブロックに立っていたお年寄りに白杖がぶつかり転ばせてしまった。「立ち上がれないぞ」などと怒られ、「自分も加害者になるんだ」とショックだった。音楽活動もできず、もやもやした気持ちを抱えていた時期。「くさってないで、自分たちの応援歌を書いて」。生徒に言われ、ハッとした。

 高等部専攻科には視覚障害のある幅広い年代が通い、陸上でパラリンピック出場を目指す生徒もいた。競技について詳しく知らなかったが五輪と違い、障害の有無にかかわらず一緒にできるスポーツでもあると分かった。「一緒に楽しめば、壁が無くなっていくんだ」。視点が変わった。

 一七年に現在のパートナーの盲導犬アンジーが来たのも、活動再開の後押しになった。歌詞を約四カ月かけ何度も書き直し、昨年四月に「リアルビクトリー」を発表した。プロデューサーのいない自主制作だ。「どんな山もどこから登っても たどり着ける頂上は同じ」の一節にも思いを託す。「障害者にも得意なことはあり、健常者にもできないことはある。それぞれの道で歩いてきたことを認め合えたら」。曲は、動画投稿サイト「ユーチューブ」の栗山龍太チャンネルで公開している。 (神谷円香)

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