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【2020東京五輪】

五輪チケット 点字資料なし 視覚障害者「購入断念」

 東京五輪・パラリンピックの目標の一つに「共生社会の実現」を掲げる大会組織委員会が、障害者団体からチケット購入に関する点字資料などの作成を求められても、応じようとしない姿勢が明らかになった。「理念を理解しているのか」「ないがしろにされた」。団体や識者からは疑問の声が相次ぐ。

 組織委は大会に向けて策定したバリアフリー化の指針で「障がいの有無にかかわらず、すべての人々が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会」を目指すと宣言している。

 「組織委は『誰一人取り残さない世界を実現する』という大会の理念を、どう考えているのか」。バリアフリーに関する国の委員会メンバーの中野泰志・慶応大教授(障害心理)は指摘する。組織委担当者は今年七月、東京都盲人福祉協会の笹川吉彦会長と面会して要望を受けたが、その場で拒否。笹川氏は「こちらのことは眼中にないようだった」と漏らす。

 中野教授は「組織委が『どうすれば十分な情報が届くか』を視覚障害者から十分聞き取っていなかったことになり、大きな問題だ」とし「建設的な対話をしていれば、購入までの流れや専用ダイヤルの存在など、重要な内容だけでも点字やCDで紹介する配慮ができたはずだ」と述べた。

 指針には「点字の資料を提供できるようにしておくのが望ましい」との規定もあるが、組織委は取材に「『望ましい』であり、情報の内容ごとに適切な手段を選べばいい」と反論する。

 障害者の関連訴訟を多く手掛けてきた全盲の大胡田誠弁護士は「指針が明示する手段での情報提供を求めているのに、それをしないのは怠慢だ」と語気を強める。組織委は「視覚障害者の全国組織『日本盲人会連合』からは理解を得ている」としているが、同連合の橋井正喜常務理事は取材に「東京都だけの問題でなく、全国の視覚障害者が会場に訪れたいと思っている。点字などを用意しないのは間違いだ」と話し、食い違っている。

 東京都八王子市に住む全盲の宮川純さん(41)は、実際に組織委HPの音声読み上げを利用して五輪チケットを購入しようとしたが、膨大な情報を音声で聞くのに数時間かかり、完了画面にたどり着けず断念した。

 途中で、目が見える八十代の父が手伝おうとしたが、HPが複雑で購入手続きを進められなかった。宮川さんは「専用ダイヤルの存在も全く知らなかった。現状では完全なバリアフリーとは言えない。パラは知人が出場する可能性があるので購入したいが、今のままでは難しい」とこぼした。

 

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