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【東京新聞フォーラム】

「守ろう!海の生態系」 未来の海のため行動

プラスチックによる海洋汚染などについて意見を交わす参加者ら=3月23日、東京都千代田区の日本プレスセンターで

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 東京新聞と日本UNEP協会(国連環境計画日本協会)が主催したフォーラム「守ろう!海の生態系」が3月23日、東京都千代田区の日本プレスセンターで開かれた。第1部では、同協会の鈴木基之代表理事が「人間活動と海」と題して基調講演。東京農工大学の高田秀重教授が「海のプラスチック汚染と持続可能性」のテーマで発表を行った。第2部のパネルディスカッションには、地球環境の保護をテーマにしたアートを手掛ける書道家の岡西佑奈さん、イオン株式会社で環境・社会貢献を担当する三宅香執行役が登壇した。高田教授も加わり、中日新聞の飯尾歩論説委員をコーディネーターに討論。250人が熱心に耳を傾けた。

◆主催者あいさつ 東京新聞代表・水野和伸

 廃棄されたプラスチックによる海洋汚染が地球規模で広がっており、大きな関心事となっている。今まで捨てられていたプラスチック製ストローなどを再生可能な物に代えていこうという動きも出ており、今日のテーマは誠に時宜を得ている。

◆基調講演 日本UNEP協会・鈴木基之代表理事 プラ普及で海の汚染拡大

基調講演する日本UNEP協会の鈴木基之代表理事=東京都千代田区で

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 地球上の面積の70・8%を海が占め、地球上の総人口一人当たりの海水容積は東京ドーム百個分以上と推定される。しかし、動植物プランクトンや藻類、海草類、数々の魚介類、哺乳類動物、鳥類などで構成される「海の生態系」は主に「沿岸域」で支えられ、人間の活動から多大な影響を受けている。その沿岸域は、海洋面積のわずか約0・1%、容積は海全体の約二十万分の一にすぎない。

 平成初期からの二十五年間で総人口は一・三八倍、経済活動の指標である世界総生産は三・三一倍と増大し、一人当たりの経済活動は平均で二・四倍に発展した。さらに、地球温暖化に最も影響が大きい二酸化炭素の排出量は、この時期に一・六三倍となった。

 人間の活動により海域の生態系が受けた大きな影響を三つ挙げると、二酸化炭素排出による気候変動(温暖化の進行)、増加し続ける人口を養うために広がった工業的な窒素肥料生産(主に沿岸域)、丈夫で軽く、安価で便利な石油由来のプラスチック類の急速な普及が要因となっている。

 プラスチック類の生産は経済活動の増大とともに急増し、安価なためにすぐ捨てられ、丈夫だから分解されず残り続けて、海に放出され、軽さゆえに一部は漂い続ける。海洋中の大型動物も漁網、袋などプラスチック類の影響を受けていることは広く知られている。紫外線や外力で微細化したものは動物プランクトンと誤認されて魚類に摂取されるなど、多様な被害が拡大している。

<すずき・もとゆき> 1941年、東京都生まれ。日本UNEP協会代表理事、東京大名誉教授。国際連合大副学長、中央環境審議会会長、放送大学教授ほかを歴任、(公財)環日本海環境協力センター理事長なども兼務。

◆パネルディスカッション

 岡西・頭が二つあるイルカに衝撃 

 三宅・使い捨てプラ企業努力必要

 高田・バイオマスの包装選択肢に 

イオン執行役の三宅香さん

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 飯尾 海に流れ出したプラスチックはもう限界まで来ている。どうすればいいのかを考えていきたい。

 三宅 環境はここ数年で急激に悪化している。企業としてもう一段思い切ったステップを取ることが求められている。

 岡西 中学三年の時、頭が二つあるイルカの写真を見て大きな衝撃を受けた。海の汚染が進んでいるからだと学んだ。書家、作家となり、海の汚染、プラスチックごみ問題をアートで訴え掛けることもしている。

 高田 環境問題では、よく3R(リデュース=減らす、リユース=繰り返し使う、リサイクル=再資源化)と言われる。もう一つのR、リフューズ(断る)を入れて4Rともされ、流通業界には「余分なものを提供しないで」という圧力になる。

書道家の岡西佑奈さん

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 飯尾 イオンはどのような活動をしているのか。

 三宅 平和・人間・地域がグループのキーワード。「スーパーなのに、なぜ平和?」と言われるが、平和であってこそ、環境が守られ、事業活動も可能になる。マイバッグ持参運動の開始は一九九一年。いまはレジ袋を無料配布していない店のレジ袋辞退率が80%を超えた。食品トレーなども再生させているが、回収スキームを含め社会インフラの構築が求められ、企業ももっと努力が必要だ。

 岡西 海の生物の食物連鎖の過程で、マイクロプラスチックを大型の魚などが取り込んでいると言われるが。

 高田 食物連鎖は網状なので、プラスチックは生態系全体に生物の小から大まで広がっているだろう。

 飯尾 マイクロプラスチックが人体から検出されたという研究結果もあった。

 高田 ウィーンの研究者が人の糞便(ふんべん)中から見つけた。糞便にあったので排出はできるということだ。もっと小さくなったものがあれば、細胞膜を通ってどこかにたまることはあり得る。一緒に入っている添加剤、化学物質の一部は脂肪や肝臓にたまっている可能性もある。

コーディネーターを務める本紙の飯尾歩論説委員

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 岡西 化学繊維の衣服にも問題があると聞いている。

 高田 フリースが代表的。一着洗濯すると、マイクロプラスチックが二千本出る。下水処理場でも1%ぐらいは取り除けずに流れ出す。

 飯尾 人体にも危険が近づく中、回避するには?

 高田 なくてもいいプラスチックなら、意思表示することが大切。企業には選択肢を与えてほしい。状況を理解する人はバイオマスでラッピングしたものを買う。値段は高くてもそうした商品を並べれば、買う消費者は現れる。そうした行為がだんだん増えれば社会は変わっていくと思う。

海洋汚染を表現した岡西佑奈さんの作品

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<三宅香(みやけ・かおり)> 1968年生まれ。91年、ジャスコ株式会社(現イオン株式会社)入社。国際事業、財務、ブランディング部長、クレアーズ日本株式会社社長、イオンリテール株式会社執行役員広報部長兼お客さまサービス部長などを経て、2017年からイオン執行役 環境・社会貢献・PR・IR担当。

<岡西佑奈(おかにし・ゆうな)> 1985年、東京都生まれ。7歳から書を始め、高校在学中に師範免許を取得。「調和」をテーマに独自の曲線美や心象表現で多数受賞。3月からART PROJECT「真言」を開催、各地で展示会やパフォーマンスを行う。

<飯尾歩(いいお・あゆみ)> 1960年、愛知県生まれ。85年、中日新聞社に入社。2002年から論説委員として、ごみによる環境汚染問題や農業を担当。

◆東京農工大・高田秀重教授 影響は生物に 脱プラ製品を

パネルディスカッションで発言する東京農工大の高田秀重教授=東京都千代田区で

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 プラスチックによる海洋汚染は、北極から南極、海底、そしてプランクトンからクジラまで、生態系全体に広がっている。プラスチックに含まれる有害化学物質はプラスチックを摂食した生物に移行し、生物への影響も懸念されている。

 国際的には、予防的な対応が取られ、ストロー、レジ袋、ペットボトルなど使い捨てプラスチックの使用自体の削減が進んでいる。日本では焼却によって発生する熱エネルギーを回収する「サーマルリサイクル」という間違った考え方から使い捨てのプラスチックが大量に焼却されている。さらに、国内でリサイクルできないプラスチックはアジア諸国へ輸出され、現地や地球規模での環境汚染を深刻化させている。

 石油から作られるプラスチックが海洋汚染や温暖化につながり、次世代への負の遺産となる。使い捨てプラスチックの使用自体を減らしていく必要がある。

<たかだ・ひでしげ> 1959年、東京都生まれ。東京都立大(現首都大学東京)理学部化学科卒業。専門は人工化学物質による環境汚染の解析。98年よりプラスチックによる海洋汚染や環境ホルモンの研究を行う。主な著書は「環境汚染化学」(丸善出版)ほか。

<日本UNEP協会> 2015年4月設立。国連環境計画(UNEP)の日本における活動を普及するとともに、日本と海外を結び、持続可能な環境ネットワークをつくる。

 

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