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【群馬】

「鬼石」民話から郷土愛 藤岡の伝承絵本に

絵本を手に「子どもたちに故郷への愛着や誇りを持ってもらうきっかけになれば」と語る相庭沙奈絵さん=藤岡市鬼石で

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◆元地域おこし協力隊員 画家・相庭沙奈絵さん

 藤岡市鬼石地区の民話を通じて地域に息づく文化や歴史を伝えようと、地域おこし協力隊員として活動してきた画家の相庭沙奈絵さん(42)=東京都台東区=が絵本「鬼石のおこり」を制作した。地名の由来として伝わる昔話を調査し、現在の景観にもつながる地元の山々や清流、山里などとともに描いた。相庭さんは「子どもたちに故郷への愛着や誇りを持ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。 (石井宏昌)

 物語は山に住む赤鬼と青鬼が登場し、地域の始まりにつながる話。人里に下りて乱暴を働く鬼を恐れ、寂れていく村。旅の途中に訪れた弘法大師が村人を救おうと山で不動明王の真言を唱えると、鬼たちは「わー、たまらん」と大きな石を投げて逃げて行った。空から落ちてきた石を人々は神さまとしてあがめ、石の上に神社を建て、落ちた地域を「鬼石」と呼ぶようになったという。

 旧鬼石町の町誌や昔話をまとめた資料などを調べ、お年寄りにも伝承を聞いて物語を分かりやすくまとめた。子どもたちにお気に入りの場面を持ってもらおうと、ページによって画風も変えた。使われた十五枚の絵は、影絵のような表現や大胆な構図で荒々しいタッチ、穏やかな水彩やコラージュ風など多彩だ。

 「御荷鉾山(みかぼやま)」「投石峠(なげいしとうげ)」「桜山」「神流川」など実在の地名も出てくる。実際に鬼石神社の本殿床下には大きな石があるという。山や川など土地の位置関係も現在の光景につながるように心掛けた。相庭さんは「絵本を見た子どもたちが、実際の地域の中で描かれたものを発見できるようにした。昔話の風景が今の街の暮らしにつながるように工夫した」と話す。

 東京都出身の相庭さんは美術大学卒業後、デザイン事務所などでイラストや広告デザインなどに従事。二〇一六年三月〜今年二月まで協力隊員として鬼石地区の観光イラストマップや温泉郷の壁画制作など観光振興の美術活動を担当した。

 絵本は一年目から企画を温めてきた。きっかけは若者の地域離れ。「若者が地域に戻らないことで、住民が地域に対して自信を失っている気がした」と相庭さん。「子どものころに古里を大切に思う気持ちが育まれれば、やがて戻ってくる力になると思う。多くの人に鬼石の魅力を知ってもらうきっかけにもしたい」と話す。

 絵本は協力隊活動で市が五百部発行し、県内の公立図書館や藤岡市の小中学校と幼稚園、公民館などに配布。読み聞かせに利用している学校もある。地元のお土産品など地域おこしとしての活用も観光や商工関係者、行政などと検討中という。

 

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