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【群馬】

保存、活用あらためて誓い 富岡製糸場と絹産業遺産群 世界遺産5周年で式典

世界遺産登録5周年の記念式典があった富岡製糸場=いずれも富岡市で

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 世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の登録五周年を記念した式典が二十二日、富岡市の富岡製糸場で開かれた。県や構成資産の地元自治体、遺産に関わる市民団体の関係者や市民らがこれまでの活動を振り返り、「世界の宝」として保存と活用に取り組むことをあらためて誓った。一方、製糸場では登録後の来場者が減少し続け、大きな課題となっている。(石井宏昌)

 式典は「次世代につなぐ世界遺産」をテーマに製糸場敷地内の首長館を会場に約百五十人が参加した。主催者として出席した大沢正明知事は「各資産で保存事業が進み、地元の解説ボランティアなど県民の取り組みが広がっている。各資産を生かした地域づくりも進められている。世界遺産の価値をさらに発信するため、県では来年三月に世界遺産センターをオープンさせるほか、各市町と協調して保全活用を進める」とあいさつ。構成資産のある富岡市、伊勢崎市、藤岡市、下仁田町の首長がそれぞれ五年間の整備状況と今後の活用方針などを説明した。

 富岡市に開設予定の世界遺産センターで上映するガイダンス映像もお披露目された。製糸場をはじめとする構成資産の操業時の姿をCG映像などで再現した動画で、絹産業の歴史や各資産の特徴、世界遺産としての価値や魅力を紹介し、会場の参加者も見入っていた。東京大学名誉教授で県世界遺産専門委員の石井寛治さんが「伝統と革新 群馬・世界遺産の歴史」をテーマに記念講演し、登録までの経緯や登録後の管理や活用、研究成果などを解説。「世界遺産が観光資源になるのは大切だが、本来は先人の努力と経験をしのび、勇気をもらうことが大事。さらに研究を深め歴史を究明してほしい」と語った。

 締めくくりには東置繭所(ひがしおきまゆじょ)に会場を移してピアノ五重奏団のコンサートが開かれ、優雅な演奏に包まれて五周年を祝った。

製糸場の東置繭所で開かれたコンサート

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◆来場者が激減、対策課題

 富岡製糸場の関係者が頭を悩ませるのが来場者の減少。二〇一四年六月に世界遺産に登録され、登録前年の一三年度に約三十一万人だった製糸場来場者は、登録後の一四年度、四倍以上の約百三十三万人に激増した。だが、この年をピークに減り続ける。一六年度は八十万人と百万人を割り込み、一八年度は約五十二万人とピーク時の半分以下に落ち込んだ。

 富岡市の担当者は「登録直後は一時的なブームでこれを維持するのは困難」とした上で「保存のために国宝の西置繭所など工事で閉鎖中の施設もある。見学可能な施設が限られていることが、リピーターの少なさに影響しているのでは」と推測する。

 市も来場者確保に懸命だ。四月には敷地内にある旧社宅の保存改修を終え、展示や体験施設として公開。西置繭所は二〇年度に公開予定で、多目的ホールやギャラリーなどを設置し、イベントや会議などに活用する。魅力を分かりやすく発信し、リピーターを確保しようと来年度以降、解説ガイドのルートも増やす方針。「工女さんの暮らしぶりの解説など、より特化したコースにしたい」という。

 市は市総合計画で当初百万人に設定していた来場者の目標を二二年度までの中期計画で六十万人に見直した。市富岡製糸場課の担当者は「保存と活用の費用を確保するためにも工夫して目標を達成したい」と話す。

<富岡製糸場と絹産業遺産群> 高品質な生糸の大量生産を実現した技術革新と、世界と日本との技術交流を主題とした近代の絹産業に関する遺産。フランスの技術を導入した日本初の本格的製糸場「富岡製糸場」(富岡市)、瓦屋根に換気設備を取り付けた近代養蚕農家の原型「田島弥平旧宅」(伊勢崎市)、日本の近代養蚕法の標準「清温育」を開発・教育した場「高山社跡」(藤岡市)、自然の冷気を利用した国内最大規模の蚕種貯蔵施設「荒船風穴」(下仁田町)で構成する。

 

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