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【茨城】

<原発事故に備え バス避難を考える>(中)各社の状況 県、未把握

関東鉄道が導入したIP無線。携帯電話と同じ電波を使うが、非常時には優先的につながる=土浦市で

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 「バスがどこを走っているのか分からず、本当に困った。途中で何かあったらどうしようって」

 北茨城市のバス会社「ハヤト観光バス」を経営する武子(たけし)洋一さん(69)は、東日本大震災発生直後の混乱の様子をそう切り出した。

 武子さんは当時、津波被害のあった平潟港から二百メートル離れた事務所でひどい揺れを感じた。マイカーに飛び乗り、ラジオで津波を知ると、近くの平潟小に通う孫二人を迎えに行った。

 事務所や自宅は高台にあったため難を逃れたが、同時に心配したのは一台の中型バスだ。所有する三台のうち唯一、使われていて、北茨城や日立、水戸市の客三十五人ほどを乗せて、東京都八王子市の着物の集会に行っていた。

 「運転士の携帯電話に何度もかけたが通じなかった。ようやくつながったのは、その日の夜でした」。運転手は、乗客にけが人がいないことや高速道路がストップし、迂回(うかい)ルートで帰ることを伝えてきた。

 ルートは、八王子から埼玉、群馬、栃木を経由して国道50号に入り、水戸市に戻るとした。異常な事態の中、慣れない道を走る。事故に巻き込まれる危険性もあり緊張感は高まる。

 小まめに連絡が欲しかったが、なかなかつながらなかった。二回目の連絡は翌朝。バスは栃木県小山市の道の駅にいた。そこから乗客を降ろしながら、北茨城市に無事に帰還。発生から二十時間が経過していた。

 この経験を踏まえ、武子さんは新たに導入したバス三台に、衛星利用測位システム(GPS)を搭載。事務所のパソコンで移動状況をチェックできるようにした。費用は計約二十万円だった。武子さんは「設備は高いが、いざという時のために必要」と強調する。

 県内で最も多いバスを保有する関東鉄道(土浦市)も運転士との連絡用にIP無線を順次、配備。二〇一六年に全車両約五百台に取り付け終えた。担当者は「一台約十五万円で、段階的にそろえるしかなかった」と話す。設備が高額で、大きなバス会社でさえ、配備に苦労する。

 県は県バス協会と、東海村の日本原子力発電東海第二原発の事故時に避難住民を乗せる運転士との連絡手段についても協議。県の担当者は「連絡手段は、運転士に行き先を指示するのに重要。各社で携帯電話や無線など対応が異なるが、その設備が使えなくなった時を想定し、連絡手段の多重化も必要だ」と説明する。

 ただ、県は現状、各社が具体的にどんな連絡手段を持っているのかさえ把握しておらず、議論は始まったばかりだ。 (山下葉月)

 

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