東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 茨城 > 記事一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【茨城】

<ひと物語>平成最後に「完成版」を 県内の一本桜番付を作成する「伝道師」・坂野秀司さん(43)

写真

 静かに、そして雄弁に咲き誇る一本桜。桜並木とひと味違う凜(りん)としたたたずまいに魅了され、県内各地に点在する一本桜を紹介する番付を作成し、ホームページ上で公開している。「平成の最後に完成版を作るのが目標」と熱っぽく語る。

 もともと桜には「興味がなかった」。しかし、二〇〇八年から一一年に勤務した福島県いわき市で、心を奪われる出会いがあった。小川諏訪神社の枝垂れ桜。「目の前に立ったら人生が変わる。そのくらい圧倒的だった」と振り返る。

 調べてみると、福島県内には、三春町の三春滝桜など特別な存在感を放つ一本桜が多数あり、それらをめでる文化も根付いていると知った。一方、ふるさとの茨城では一本桜が「埋もれている」と感じた。

 そこで県内に転勤後の一二年、一本桜の実態調査に乗り出した。すると翌年、県立高の教員だった川上千尋さんが一九八三年に作成した「茨城桜見立番付」に行き当たる。

 相撲番付を模した桜見立番付の詳細さに感銘を受けたが、番付に載っていた一本桜を訪ねてみると、枯死していたり枝が折れていたり。調査時点の昭和後期とは状況が大きく変わってしまっていた。

 そこで「今の時代に即した番付を作り直したい」と決意し、一四年に平成版を公表。以来、毎年情報を更新し精度を高めてきた。一七年には川上さんに面会。継承の許諾を得て、一八年更新分から「名誉顧問」として名を連ねてもらった。

 ただ、川上さんの番付とは異なる基準がある。樹齢や幹回りといった植物学的視点に加え、その一本が持つストーリー性を番付編成に反映している点だ。それが一本一本の個性であり、番付を編成する上で欠かせないと考えたからだ。

 こうした思いから、最高位の「東の横綱」は川上さんと異なり、偕楽園左近桜(水戸市)を据えている。樹齢は六十年そこそこと若いものの、京都御所にルーツがあるなど「歴史の重みが違う」ためだ。

 作業にかかる労力は尋常ではない。花見の時期に満開状態を見て回れる一本桜は五十本ほど。オフシーズンは情報収集に注力する。それでも「自分一人で作り上げたわけではない」と、さまざまな人の協力で成り立っていると強調する。

 例えば「西の関脇」に名を連ねる「南指原(なじわら)の山桜」(笠間市)。樹齢数百年とも言われた名木は八年ほど前に枯れてしまったが、市内の笠間焼作家の新井倫彦さんから往年の写真を提供してもらい、番付に取り込むことができたという。

 間もなく平成時代も終わり。番付更新も今年を最後にすると決めている。集大成の番付発表は花見シーズンが終わってからを予定しているが、「一本桜の伝道師」としての活動は今後も続けていくつもりだ。 (越田普之)

<さかの・しゅうじ> 1975年10月、美野里町(現小美玉市)出身。有線放送サービスを提供する株式会社USEN水戸支店に支店長として勤務している。番付は自身のホームページ(https://sakuraibaraki.localinfo.jp/)で公開中。水戸市を流れる桜川沿いでヤマザクラの景観復活を目指す「水戸桜川千本桜プロジェクト」にも参加している。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報