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【茨城】

<ひと物語>青く染まる丘、奥深い 国営ひたち海浜公園植物管理担当・奥貫裕さん(45)

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 四月初めごろは毎年不安になる。一面青く染まるのか、と。ひたち海浜公園で植物を担当して九年。できることを全てやっても不安はつきまとう。「でも、暖かくなると植物はちゃんとスイッチが入る。ここまでくれば安心です」。丘を染めるネモフィラを眺める顔は晴れやかだ。

 ゴールデンウイークの園の名物になったネモフィラの植栽は、二〇〇二年から。戦後、米軍の射爆撃場だった「みはらしの丘」を過去を忘れさせる美しい景色にしようと、当時の園のメンバーが話し合って決めたという。寄せ植えの脇役のようだった花は、空とつながる風景をつくり見事、主役となった。

 作業は現場を見て、自然と対話しながら進める。決まった時期に咲かせるよう目指すが、近年は異常気象も多い。雨が全然降らなかったり、種をまいた後に大雨が降って土が流されてしまったり。厳しい寒さが一転、記録的な暖かさで一気に花が咲き、大型連休前に見ごろを迎えてしまった昨年のようなこともある。

 「経験やデータからできる対処はする。ただ、自然に任せざるを得ないこともある。自然相手で毎年同じように咲かせるのは難しいけれど、その奥深さがまた楽しいんです」

 赴任時に年約百五十万人だった来園者は、約二百三十万人に増えた。

 花畑の中に写真のスポットをつくったこともあったが、踏み荒らしの被害が出た。見せる工夫は試行錯誤の連続だが、「多くのお客さまに見ていただけるよう皆で頑張っているので、来園者が増えることは素直にうれしい。あの時の経験もあるので」。あの時とは、東日本大震災だ。

 震災から約一カ月後、公園は営業を再開したが、訪れる人はわずかだった。きれいに花を咲かせても、見てくれる人がいない寂しさを痛感した。今の時期は、青一色のネモフィラと約二百三十種のカラフルなチューリップの対比も楽しんでほしいという。

 ネモフィラをきれいに見せるため、開園前などの草取りは欠かせない。コキアと年二回使う丘は、傷んだ箇所を早めに処置するなど努力は多い。植栽の拡張の要望もよく聞くが、こうした管理の態勢を整えてからの対応になるそうだ。

 ネモフィラを栽培する公園は増えた。ただ、そのパイオニアで、空とつながる景観はここだけだと胸を張る。

 「今年は初めて冬に水まきをした。十年目の来年もきっと初めてがある。腰を据えて仕事をさせてもらっている強みを生かし、日本中、世界中からもっと訪れてもらえるよう質を高めたい」。言葉に力がこもる。 (鈴木学)

<おくぬき・ゆたか> 1974年1月、埼玉県所沢市生まれ。父親が造園家で幼い頃から草木に親しんできたこともあり、大学卒業後、造園業の日比谷アメニスに入社。樹木や芝生の管理部署にいて、2010年にひたち海浜公園に赴任した。自身の好きな花は、チューリップ。「『海浜公園はチューリップも日本一』と言われるようにしたい」と話す。

 

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