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【茨城】

<地域と歩んで 崙書房の半世紀>(下) 読者から郷土作家へ

「福田村事件」を書き上げた辻野弥生さん=いずれも千葉県流山市で

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 本県などの郷土作品を世に送り出してきた崙(ろん)書房出版は、読者から書き手に転じた郷土作家も輩出してきた。これまで十五冊を出版した千葉県流山市の郷土史作家、青木更吉(こうきち)さん(86)もその一人。「崙書房に書かせてもらったから現在の自分がある」と感謝する。

 東京都葛飾区の小学校教諭だった一九七九年、ふるさと文庫で第一作の「流山の伝承遊び上・下」を書いた。「素人がどんどん書くのを見て、書こうという気になった」と振り返る。

 「売れないかも…」と申し訳ない気持ちで原稿を持ち込むと、崙書房社長の小林規一(のりかず)さん(72)は、いつも「これは崙書房にとって、出さなければならない本です」と、一度も出版を見送らなかったという。「素人にとって、それがうれしかった」と青木さんはしみじみと口にする。

 二三年、関東大震災直後の流言飛語の影響で、香川県の行商団が福田村(千葉県野田市)で自警団に暴行され、幼児を含め九人が殺害される事件があった。

 地元の住民が口をつぐむ暗い歴史を二〇一三年、同人誌「ずいひつ流星」を主宰する流山市の辻野弥生さん(78)が「福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇」にまとめ、ふるさと文庫に収めた。「地元に出版社があることが誇りだった。ベストセラーはなくとも、地域を知るために大事な出版社だった」と惜しむ。

 辻野さんは、崙書房二代目社長の白石正義さんにもインタビュー。販売を一手に引き受けて茨城県に販路を広げ、書店を巡って自社の本が片隅に追いやられていないか目を光らせる八十歳の姿が当時のタウン誌に掲載された。

 ◇ 

 流山市立森の図書館は、企画展「ありがとう崙書房出版」を七月二十日まで開く。ふるさと文庫をはじめ創業当時からの看板などを展示する。

 館では、崙書房の特設コーナーを開設。館長の川島威史(たけし)さん(41)は「図書館には本が残る。展示が、郷土に目を向け崙書房の本を読むきっかけになれば」と願う。月曜休館。七月十五日開館、十六日休館。問い合わせは館=電04(7152)3200=へ。

 市立中央図書館でも七月二十四日〜八月三十一日に展示する。(林容史)

流山市立森の図書館に開設されている崙書房出版の特設コーナー

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