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【茨城】

台風19号被害 断水も1万軒超 鉄道、農業…影響深刻

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 台風19号で、県経済を支える農業や県民生活にかかせない鉄道などに深刻な影響が出ている。農業の推計被害額はすでに26億7700万円に上る。JR水郡線の全線復旧は見通せず、常陸大宮市や大子町などで断水は1万軒超で続いており、日常生活を取り戻すには時間がかかりそうだ。

 県災害対策本部の十七日午後三時現在のまとめでは、建物被害は二千軒を突破した。数が判明していない自治体もあり、全容はいまだ明らかになっていない。一方、学校関係は全校再開が見えてきた。

 新たに大洗町や城里町などで床上浸水が二百三十一軒、床下浸水も三百四十六軒で確認された。判明分で床上浸水は千五百五十八軒、床下浸水は七百十五軒になり、半壊や一部損壊を含めて建物被害は計二千三百七軒になった。ただ、水戸市の浸水家屋数の確認はまだできていない。

 ライフラインでは、断水が大子町と常陸大宮市の一部で解消し、水戸市を合わせて一万一千百四十六軒になった。停電は、東京電力が十六日に解消されたと発表したが、受電する施設や民家の引き込み線や機器などが壊れているケースもあり、停電が続いている場合がある。

 農林水産業の被害も日を追うごとに拡大。推計被害額(計約二十六億七千七百万円)の内訳は、農作物が約八億百万円、農業用施設が約一億七千七百万円、土地改良施設が十五億一千八百万円など。ハクサイの株が傷つくなどで被害額は約三億一千六百万円。地域は結城市や坂東市など十一市町に及んでいる。このほか、ソバが七千三百万円、大豆が七千万円、イチゴが六千九百万円などとなっている。

 県教育委員会によると、浸水被害で休校していた水戸市の国田義務教育学校は十八日から通常授業、飯富中学校も通学路の安全確認で、始業時間を一時間遅らせて授業を再開する。

 県内の公立小中学校で唯一、十八日も休校となる飯富小学校は、二十一日の再開予定だ。県立学校では、短縮授業になっている大子清流高校が二十一日から通常授業の予定で、鬼怒商業高校も来週にも再開の見通しという。(鈴木学)

◆農地浸水した常陸大宮など 被害高額…離農を懸念

泥水に浸ったイチゴを洗浄するボランティア=常陸大宮市野口で

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 台風19号で那珂川と久慈川がともに決壊した常陸大宮市では、農地も広範囲で浸水した。地域で中核的存在の専業農家の被害は高額で、離農者が相次ぐことを懸念する声が上がる。

 「イチゴの生命力に賭けるしかない」。常陸大宮市野口の那珂川決壊現場から数百メートル下流側の約三十五アールで、イチゴを栽培する都竹大輔さん(47)は、泥をかぶったビニールハウスを眺めて語った。

 都竹さんによると、決壊当初は高さ約三メートルほどのハウスがほぼ水没した。親指ぐらいの大きさの果実がなっていたが、今月末に予定していた今シーズン最初の収穫はできなくなった。

 泥水に浸った苗に今後も果実がなるのか、まだ分からない。祈るような気持ちで、知人らに洗浄を手伝ってもらっている。断念した最初の収穫分だけで被害額は約三百万円。全部の苗が廃棄処分になれば、被害は約二千万円に膨れ上がる。ハウスや肥料などの被害も一千万円相当とみている。

 「堤防の決壊でこうなったのだから、本当は現状復旧をしてほしい。自分では規模を縮小しないと復旧できず、それでは生活できないので廃業しかない。『水害を想定しろ』と言うのは『ここで農業をするな』と言うのと一緒」と訴えた。

 久慈川沿いの常陸大宮市塩原で、約六十アールの水田を耕作する男性(77)は、農業機械五台が水没。稲刈りは既に終え、大豆は収穫をあきらめた。痛手なのは農業機械で「買い直せば数百万円は確実。メーカーに頼んでも修理費は安くないだろう」とぼやく。「迷っているが、六割方やめる方に気持ちが傾いている」

 地元のJA常陸の野上昭雄会長も「今回の台風で離農する、と言っている農家は数軒ある。専業農家が離農してしまえば、地域にとって大打撃。支援をしなければ存続が困難で、国や県と協議しなければ」と話した。(宮本隆康)

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 那珂川などが氾濫した水戸市飯富町でも、国道123号沿いの田畑に川の水が流れ込んだ。

 米やネギを育てている農家の女性(59)は「まるで湖の底」と呆然(ぼうぜん)と田畑を眺めた。約二ヘクタールの田畑はすべて水に漬かった。米は既に刈り取り無事だったが、ネギがまだ収穫前。「助かってくれるといいけど、無理かなとも思う。生活の糧なのに。十二月までに育て直して、出荷できるようになるのを願うばかりです」と嘆く。 (水谷エリナ)

崩落したJR水郡線の橋。線路は大きく曲がっている=大子町南田気で

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◆JR水郡線、常陸大宮−郡山で運休 曲がった線路、転がる橋脚 

 台風19号の影響で、JR水郡線は、久慈川に架かる橋が崩落するなどで常陸大宮駅から郡山駅(福島県)までの運休が続いている。一部区間で臨時バスの運行が始まったが、利用者の不便な生活が続きそうだ。

 袋田−常陸大子にある橋の崩落現場(大子町南田気)では、ぐにゃりと大きく曲がった線路が川に落ち込んでいた。橋脚は流され、川の中に転がっていた。

 近くに住む青木恒夫さん(70)は、十二日午後十一時すぎに「バキ、バキ」という崩落の音を聞いた。十三日午前零時すぎに自宅から外を見ると、橋が見えなくなっていた。「一体いつ直るんだろうか」と、原形をとどめない橋を見つめた。

 周辺では、住民が生活道路として利用していた木橋が、流木に覆われて使えず、遠回りを余儀なくされているという。

 常陸大宮−郡山で運休が続いているため、JR東日本は十六日から、常陸大宮−常陸大子で臨時バスを運行。だが、慣れない方法での通勤通学に、利用者からは不満も聞かれる。

臨時バスでJR常陸大宮駅に降りる利用者=常陸大宮市南町で

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 大子町から太田一高(常陸太田市)に通う二年生の仲野舞祐さん(16)は、通常よりも約一時間早い午前五時四十分に常陸大子駅を発車するバスに乗る。そのため、午前四時すぎに起きなければならず、「いつまでこの生活が続くのか」とため息をついた。

 大子町から水戸市の専門学校に通う渡辺竜生さん(19)も、「水郡線なら乗り換えは必要なかったけど、バスだと途中で乗り換えが必要で、不便です」と話した。(松村真一郎)

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