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【茨城】

<ひと物語>話すことで穏やかに 大切な人を亡くした家族のサロン「ふらっと みと」代表・大森静子(おおもり・しずこ)さん(79)

「サロンで話せることを話して、元気になっていっていただきたい。自分もそうしてきたので」と話す大森静子さん=水戸市で

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 夫や妻、親など、それぞれ大切な人を亡くした人たちが集まり、胸の内を語り合う。「ふらっと みと」はそういう場だ。波のある気持ちがフラット(平ら)になってもらえるようにと名付けた。

 「私自身が、話すことで自分が変わっていく体験をしました。私の場合、亡くしたのは夫で、当初は悲しみや苦しみがとがった感じでした。元気な夫婦を見るとうらやましいというより、怒りを感じるような。それが何回も話すことで、穏やかになっていくというか、自分の中でホロホロと何かが崩れていくような感覚があったんです」

 生命保険会社勤務の夫を亡くしたのは一九九六年。食道がんだった。分かった時は手遅れだった。闘病期間は約一年。次女が高三の受験生だったことなどもあって苦労は多かった。

 「誰かに気持ちを話したいと思っても、当時は自分で消化するしかなかった。遺族の話は、誰にでも聞かせられる話ばかりではありませんし。がんサロンができるようになって参加しましたが、患者さん中心で遺族は悲しみを語りづらい。遺族が思いを語れる場所があれば、とずっと思っていました」

 遺族が思いを話せる場は当時、水戸市にはなく、古河市や土浦市に通った。有意義だったが、時間がかかった。土浦からの帰り、同じ方面の人たちと水戸にサロンをつくろうと意気投合。昨年から準備を進め、今年一月に発足させた。

 毎月の会では参加者が自己紹介し、それぞれが体験を話す。「『何度話してもいいですよ』と言っています。一度話したら終わりでなく、何度でも。ただ『話したくないことはいいですよ』とも言います」

 意見はせず、知り得た情報は口外しない。それが約束事だ。女性が多いが、毎回参加の男性たちもいる。初めて来る人もほぼ毎回いるが、それぞれが自分の体験を話すので自然に話せるという。県央、県北にはこうしたサロンがないため探し当てて来る人もいて、求められていることを感じる。

 「何かやろうと思った時にフットワークは軽いんです。一大決心をして取り組むのではなく、失敗したら考えればいい。できることをやっているだけで、目が悪くて、できないことはメンバーたちが助けてくれる。目が悪いことも、悪いことばかりではないですね」

 課題は広報活動だ。亡くなる人はいるし、そこには必ず遺族がいる。参加するしないは別に、まず知ってほしいと願う。

 「私がそうだったように話すことで癒やされ、元気になってもらいたい思いは強いんです。元気になったら来なくていい。ここは通過点でいい。元気になるための場所だから」と優しい目で語る。 (鈴木学)

     ◇

 「ふらっと みと」は、毎月第2日曜午後2〜4時にJR赤塚駅近くの水戸市福祉ボランティア会館「ミオス」で開催している。参加無料。アドバイザーとして、大切な人を亡くした人のサポートを学んだ看護師らにも参加してもらっている。希望者は大森さん=電029(253)3391=へ。

 

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