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【茨城】

常磐線、きょう全線開通 被ばくの懸念 根強い声

帰還困難区域を通過する車両の線量測定などを訴える動労水戸の組合員ら=ひたちなか市で

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 東京電力福島第一原発事故の影響で不通が続いてきたJR常磐線富岡(福島県富岡町)−浪江(同県浪江町)間の二〇・八キロで十四日に運行が再開し、茨城県民になじみ深い鉄路が九年ぶりに全線開通する。しかし、不通区間の駅周辺の避難指示は解除されたものの、一帯は放射線量の高い帰還困難区域のままだ。県内の労働組合や沿線住民の間からは、放射線被ばくによる健康被害を懸念する声が根強い。 (佐藤圭、水谷エリナ)

 JR東日本の社員らでつくる労働組合「動労水戸」の調査によると、試運転で帰還困難区域を通過した車両のフィルターに付着したちりから一キロ当たり二三五〇ベクレルのセシウム137が検出され、放射能濃度は通常の車両より二十三倍も高かった。動労水戸は調査結果を踏まえ、帰還困難区域内を通過する車両の線量測定のほか、車両整備員の被ばく防止教育や防護用具の配備を要求したが、JR側は「車両の測定を実施する考えはない」と拒否している。

 JR東日本水戸支社の雨宮慎吾支社長は十三日の定例会見で、車両への放射性物質の付着について「(不通区間の空間線量が避難指示の目安を下回る)毎時二マイクロシーベルトだということから考えて問題ないと思う」と主張した。

 動労水戸は十三日、ひたちなか市のJR東日本勝田車両センター前で抗議活動を展開し、約二十人が「会社は車両の線量を測れ」「労働者を被ばくさせるな」「乗客を守れ」などとシュプレヒコールを上げた。

 車両センターでフィルターの洗浄作業に携わっている整備員は約五十人。木村郁夫委員長は「毎日のように放射性物質が付着した車両が入ってくるが、現状のままでは労働者が健康を害し、命を失う危険さえある」と警鐘を鳴らす。

 牛久市の主婦(62)は全線開通に疑問を抱き、勉強会を開いたり、JRに問い合わせたりしてきた。「JRは観光PRばかりで、帰還困難区域内を通過する点には触れない。車両を測定せず、社員の健康を守ろうとしない姿勢では、乗客の安全も心配だ」と不信感をあらわにする。

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◆専門家ら疑問視 

 福島第一原発事故を経験した元首長や専門家も常磐線の全線開通を疑問視する。

 原発事故当時の福島県双葉町長で、町民の県外避難を指揮した井戸川克隆さん(73)は「原発事故の悪いイメージを早く払拭(ふっしょく)し、東京五輪という大行事に国民を熱くさせるためだ」と指摘した上で、「放射能汚染を示す数字はごまかせても、重要な交通インフラの鉄道が開通していない物理的実態は隠蔽(いんぺい)できないので、無理な開通をさせた」と断じる。

 原発の危険性を告発してきた元・京都大原子炉実験所助教の小出裕章さん(70)も「(不通区間は)本来なら放射線管理区域に指定しなければならない場所。公共の交通手段が乗り入れるなんてあり得ない」とあきれる。

 放射線管理区域は、原発や放射性物質を取り扱う研究機関や医療機関で設定され、作業者や周辺住民の被ばくを基準以下に抑えるため、人や物の出入りを厳重に制限している。

 一般人に許容される年間被ばく量は一ミリシーベルトだが、福島第一原発事故による避難指示に当たって年間二〇ミリシーベルトに緩和。国は今月、緩和した基準に基づき、不通区間の夜ノ森(富岡町)、大野(大熊町)、双葉(双葉町)の三駅と線路、周辺道路の避難指示を解除した。

 小出さんは「二〇ミリシーベルトというのは、かつての私のような放射線業務従事者が、給料をもらう引き換えにようやく受け入れさせられる線量。それを子どもも含めて適用するなんて論外だ」と指弾した。 (宮尾幹成)

(右)元双葉町長の井戸川克隆さん(左)元京大助教の小出裕章さん

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