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【神奈川】

空き缶ちょうちん、火の用心 中原の元消防団長・中田隆さん(89)

空き缶を加工し、「火の用心」の願いを込めたちょうちんを作り続けている元中原消防団長の中田さん=いずれも中原区で

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 空き缶で作るちょうちんに、「火の用心」の願いを詰め込んできた。川崎市中原区の元消防団長、中田隆(ゆたか)さん(89)が二〇一一年に始めたちょうちん作りは、もうすぐ累計一万個に。「火災予防の一助になればと、こつこつ作り続けてきただけ」。その節目は、通過点のひとつにすぎないという。 (石川修巳)

 中田さんが地元の消防団に入ったのは一九五〇年。自転車販売店を営むかたわら、八九年には中原消防団長に就任し、任期満了の九二年に退くまで四十年余、住民自らの手で地域を守る活動に携わってきた。

 缶ちょうちん作りは、二〇一〇年の中原区民祭がきっかけ。建設業者の組合が空き缶のちょうちんを売っているのを見て、火災予防の呼びかけに役立てるため、自分で作ってみようと思いついたという。

 見た目の良さとともに、作りやすくなるように試行錯誤を重ねた。三百五十ミリリットル入りアルミ缶の胴部が四十等分になるように、はさみで縦に切れ目を入れてたゆませ、丸みを帯びたデザインにたどりついた。

 「火の用心」と修正液で書く赤い短冊も缶を裁断して作っており、子どもたちがけがをしないように紙やすりをかける。「手間はかかるけども、手を抜けないんだ」と中田さん。

 昨年一年間に手作りしたのは千四百五十二個。作り始めた一一年から数えて今年十月末、一万個まで残り三百二十七個に迫った。来春には大台に乗るとみている。

 材料のアルミ缶は、消防署員や消防団員が飲み終えたものをすすいで持ち寄ってくれるという。完成品は中原消防署の入り口に展示し、自由に持ち帰りもできる。谷芳之署長は「学校帰りの小学生たちが喜んで、どれがいいか選んでいるんですよ」と語る。

空き缶ちょうちんは中原消防署に展示されており、自由に持ち帰れる

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 何を励みに作り続けているのですか−。記者が問いかけると、中田さんは「こんなつまらないもんでもさ、喜んでもらえる。そのことに喜びを感じているんだ」と返答。「実は、暇つぶしなんだけどね」とも笑って、作業机の正面に飾られた自筆の色紙に目を向けた。

 「たゆまざる 歩みおそろし 蝸牛(かたつむり)」。彫刻家、故北村西望(せいぼう)さんのこの句のように、一つずつ積み重ねて一万個へ。「延々と作り続ける。死ぬまでだよ」。そう決意している。

 

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