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【神奈川】

「子どもらしい生活」支援を 再接種費助成の陳情 川崎市議会委が採択

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 わが子は、小児がん患者です−。そう告白し、がん治療の影響で予防接種ワクチンの抗体が失われた子どもたちのために、再接種費用の助成を求める陳情が、川崎市議会常任委員会で全会一致で採択された。市側も「本年度内になるべく早く、制度を構築する」と説明、市独自に助成する方針を明らかにした。 (石川修巳)

 小児がん治療で骨髄移植などを受けると、治療前に受けた予防接種の抗体が失われることがあり、感染症にかかるリスクが高まる。予防接種法に基づく定期予防接種は公費負担のため無料だが、再接種は対象外。すべて自己負担になる。

 市によると、主に子どもが対象の定期接種は、麻疹・風疹や水ぼうそうのワクチンなど十種類ある。一回分で一万円前後かかり、市は「すべての種類、規定回数を再接種する場合、三十万円程度が見込まれる」と説明。さまざまな不安や負担に加え、さらなる費用負担になっている。

 「長くつらい治療を乗り越えても、再接種して抗体を獲得しなければ、子どもらしい当たり前の生活すら、ちゅうちょしなければなりません」

 費用助成を求め、市議会に陳情した川崎市内の女性(41)は苦しい胸の内をそうつづった。切実な願いに共感した千二百四十二人の署名も添えられていた。

小児がんの治療で予防接種の抗体を失った子どもへの再接種費用の助成を求めた陳情書の下書き。市議会健康福祉委員会で全会一致で採択された

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◆「抗体、残ってない」

 小学生の長男が一年生のとき、体がだるいと訴えたという。病院で磁気共鳴画像装置(MRI)検査を受け、難治性の小児がんが見つかった。原因は不明。余命四カ月とも、医師に告げられた。「長男には知らせたくない。絶望の中で治療を始めました」

 抗がん剤も放射線治療も、造血幹細胞の移植も受けた。大人でもつらい治療に耐えた長男とともに、「勘のいい長女にも『弟がいなくなっちゃう』と怖い思いをさせた」と振り返る。

 一年数カ月に及んだ入院を経て、長男は今、復学している。退院を前に「接種済みワクチンの抗体は残っていないと思う」と医師から説明があった。今後、抗体の測定検査や、必要なワクチンの再接種を受ける見通しという。

 実際、長男は退院後に水ぼうそうにかかり、「がんが再発しやすい状態」と告げられたことも。「多くの小児がん患者が集まる拠点病院では、一人の感染症の発症が大きなリスクになる」とも陳情で訴え、再接種への後押しを求めた。

◆90自治体が助成

 厚生労働省によると、全国千七百四十一市区町村のうち、今年七月時点で新潟市や名古屋市、浜松市など、5%に当たる九十自治体が独自に再接種費用を助成。うち二十八自治体が全額を助成していた。

 川崎市も七月から検討に着手。安全に再接種するための手続きや、有効な再接種の回数、時期などを慎重に検討しているという。先行する自治体の助成実績から人口比で計算すると、市内の助成対象は一年間に十五人程度、合計で百五十万円程度とみている。

 一方で国に対し、再接種も定期接種に位置づけるよう引き続き要望する。

 「再接種を必要とする患者は目の前にいる」「一刻も早く助成すべきだ」。十一月の市議会健康福祉委員会で、市側に迅速な対応を求める声が相次ぎ、委員全員が陳情に賛成した。

 提出した女性は言う。「数は少なくても、小児がんの患者がいなくなることはありません。子どもが日々元気でいてくれることが、どれだけ奇跡か…。子どもが病気になって初めて知りました」

◆助成求める陳情要旨

 予防接種の再接種が必要な小児がん患者などへの費用助成を求める陳情(要旨)

 わが子は、小児がん患者です。小児がんは原因不明なケースが多く、いつ、誰が発症するか分かりません。

 大人でもつらい治療に耐えながら、学校や幼稚園などに戻れる日々を目標に過ごしています。しかし、化学療法はがん細胞だけではなく、正常な細胞にもダメージを与えるため、予防接種で獲得した抗体を失うことがよくあります。

 ようやく社会復帰できる状態になったとしても、予防接種を再接種して抗体を獲得しなければ、友だちと遊んだり学校やレジャー施設に行ったりするなど、子どもらしい当たり前の生活すら、ちゅうちょしなければなりません。

 すべて再接種する場合、20万〜30万円かかるとされ、多くの自治体が助成を開始しています。小児がん患者は少ないため、この問題を共有できる仲間も多くいませんが、患者がいなくなることはありません。

 つらい治療を乗り越え、がんを克服した子どもたちには長い未来があります。少数しか存在しなくても、小児がん患者への再接種と抗体測定検査の費用助成を強く願います。

 

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