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【神奈川】

<元気人@かながわ>藤沢に特区活用「農家レストラン」 冨田改(かい)さん(73歳)

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 江の島に代表される藤沢市は「海」を連想させる町だ。しかし、市北部には別の顔がある。緑豊かな田園が広がる。そこで生まれ育った。大学時代、友だちに「藤沢かあ、湘南ボーイだな」と言われた。「ほんとは実家の農業を手伝うのに忙しくて」

 二十六歳で造園会社を起こし、苦労しながら経営を軌道に乗せた。年齢を重ねて周囲を見回した。「農地も山も荒れて、何とかしなくちゃと」。小さい頃から野山や田んぼを駆け回った。「美しい里山を次の世代に残したい。緑の多くは農地とつながっている。農業を元気にしたいと考えた」

 二十年ほど前から、地元の遠藤地区で地域おこしに汗をかく。合言葉は「百年後の遠藤を夢見て」。約八千五百平方メートルの山林を整備し、二〇一五年四月、約百三十種類の植物が観賞できる山野草園を誕生させた。

 次の一手が「農家レストラン」。農地は農業用施設以外の建設が制限されるが、有効活用のために要件を緩和する「国家戦略特区」に目を付けた。畑の地主らと共に農業法人を設立。国に計画を申請して認定を受けた。

 市や銀行の支援を受け、ハードルを何台も跳び越えた。食材は50%以上、市内の農畜産物を使う。農業振興を促す地産地消のレストランで、特区活用事業では関東初、全国で六例目。昨年五月の開業式典で「やっと、やっと、やっと、できた」と声を弾ませた。

 功成り名を遂げており、地元商工会議所の若い職員に「何で今さら苦労を」と不思議がられた。「欲得じゃない。好きでやっているんだ」。開業資金には銀行からの借り入れと、社長の退職金をそっくりつぎ込んだ。四十人ほどが入れる店は「友だちに『何回行っても入れないぞ』としかられた」と言うほど、にぎわう。

 ただ、ゴールではない。「農家レストランは一つの材料。遠藤に年間十万人を呼びたい」。レストランで何人、山野草園で何人、祭りで何人…と指を折る。「若い家族連れに自然に触れてもらう。定年を迎えた人たちに農地で好きな時に好きなものを育ててもらう。みんな元気になって、農地も活性化する」

 ふるさとへの尽きぬ愛情に突き動かされ、「知」を巡らせる。 (吉岡潤)

◆私の履歴書

1946年 藤沢市で生まれる

 68年 東京農工大農学部農学科卒業

 69年 千葉大園芸学部専攻科(造園)修了

 72年 造園会社「湘南グリーンサービス」設立

2007年 「遠藤の景観と農業を考える会」の活動を開始。桜の植樹などを続ける

 11年 NPO法人「里地里山景観と農業の再生プロジェクト」設立

 15年 山野草園「藤沢えびね・やまゆり園」開設

 16年 農業法人「いぶき」を立ち上げ、農家レストランの計画を国に申請

 18年 農家レストラン「いぶき」開業

 

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