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【神奈川】

研究者の目で質問 「日本ゼオン」川崎工場 天皇陛下、市内最後の訪問で

川崎工場で田中社長の説明を受けフィルムの試作品を視察される天皇陛下=川崎区で

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 平成の時代が幕を下ろすまで、わずかとなった。宮内庁や川崎市によると、天皇陛下が市内を最後に訪問されたのは2017年7月7日。合成ゴムの製造などを手掛ける化学メーカー「日本ゼオン」(本社・東京)の川崎工場(川崎区)視察だった。社長の田中公章(きみあき)さん(66)は「きちんと説明しなければ、と身の引き締まる思いだった」と当時を振り返る。 (大平樹)

 「陛下は、ほおーっ、と声を上げてくださいました」。都内の本社で取材に応じた田中さんは、笑顔を見せながら、そのときのことを振り返った。

工場視察を振り返る日本ゼオンの田中公章社長=東京都千代田区で

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 一九五九年に操業を始めた川崎工場は、自動車のエンジン用ベルトやタイヤに使われる合成ゴムを国内で初めて製造。今も現役で動く設備の前を通り掛かった際、陛下は興味深そうに見入った。

 敷地内の研究施設で田中さんは、光の向きを調節する偏光フィルムをつくる過程を説明した。このフィルムはスマートフォンや液晶テレビのディスプレーに用いられる。陛下は時折うなずきながら、真剣な表情で耳を傾けた。出来上がったフィルムを拡大した画像を見た陛下は、画像の粒子について質問された。

 陛下は魚類研究者であり、研究者ならではの視線を田中さんは感じた。「偏光について短時間で理解を深められた。一般見学者同様の問答を想定していたが、研究者の目で質問してくださった」

 液体のゴムを凝固剤で固める工程も、実演で説明を受けた。瞬時に固まる様子を見た陛下は「あーっ」と声を上げ「これがゴムなんですか」と驚きの表情を浮かべたという。

 田中さんは「多くの企業がある中で視察先に選ばれたのは名誉なこと」と胸を張る。社内外の混乱を避けるため少人数で準備を進めたが、土日も返上する社長らの姿を見た社員の中には「米大統領か首相が来るのではないか」とうわさする人もいた。

    ◇

 日本ゼオンの主力の合成ゴムは、国内の自動車産業を下支えしてきた。ただ、平成の約三十年は、もう一つの主力だった塩化ビニールの製造から撤退し、偏光フィルム製造などへの転換を進めた変革の時代だった。

 工場内で陛下が休憩した一室は記念室として保存。七月七日は記念日と位置付け、社員が家族を連れて集まり、陛下訪問を再確認する機会にしていくという。

 令和という時代に向けて田中さんは「社会のニーズと社会貢献を意識しながら、独創的な製品を作っていく。技術を拡大しながら新事業につなげたい」と意気込んでいる。

 

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