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【神奈川】

科学技術の寄与、本を通じて前陛下と交流 川崎市名誉市民の藤嶋昭さん

前陛下との交流とともに、科学技術を人類に役立てる決意を語った藤嶋昭さん=川崎市の県立川崎図書館で

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 令和が幕を開けた。昭和時代に「光触媒」を発見し、平成になって外壁材の汚れ防止、空気浄化などに応用を広げた川崎市名誉市民の藤嶋昭さん(77)は、上皇となった前天皇陛下と交流を深めてきた。つないだのは、人類の役に立つ科学技術への期待と、本だった。 (石川修巳)

 「私どもは、科学技術の進歩がもたらした光と陰とともに歩んできた過去を振り返り、人類の幸せに資する科学技術の向上に努めていかなければならない」

 十五年前の二〇〇四年四月。前陛下は日本国際賞の授賞式に出席し、お祝いの言葉でそう述べられた。壇上にいた受賞者の一人が、藤嶋さんだった。

 「ノーベル賞並みの世界的な賞を」との呼びかけで一九八五年に創設された科学者の栄誉だが、ほろ苦い記憶もある。

 授賞式に続く記念演奏会は、受賞者のリクエスト曲が演奏される。藤嶋さんはモーツァルトの「ジュピター」。隣に座った前皇后美智子さまから「藤嶋さん、どうしてジュピターなの?」と尋ねられたという。

 「実は、音楽はあまり分からなくて、秘書に選曲をお願いしていた。だから、答えられなかったんだ」

◆前陛下からの質問

 二年前には文化勲章を受章した藤嶋さん。昨年の講書始の儀で光触媒を説明したほか、御所に招かれ、前天皇ご夫妻と食事をする機会も。前陛下は「今は光触媒で何の研究を?」と関心を寄せ、静岡県沼津市にあった御用邸近くでハゼを見つけて研究するようになったことも語られた。

 もうひとつの交流ツールが本だった。藤嶋さんと親しい絵本作家、加古里子(かこさとし)さんの作品や自らの著書を前陛下に送っていた。

 「ご質問です」。昨年二月、侍従長を通じて電話があった。加古さんの絵本「だるまちゃんとキジムナちゃん」(福音館書店)に関するものだった。

 平和な暮らしを願う沖縄の習わしを背景に、だるまちゃんが島の人々と交流する物語。そこに描かれた「ばけものハブ」を巡って、「本物のハブは小さいのに、これは大きすぎる」との問いかけだったという。

 藤嶋さんは「(前陛下が翌三月に)沖縄を訪問される前のことだった。沖縄に思いをはせて手に取られたのではないか」と語る。

藤嶋さんに質問が寄せられた「だるまちゃんとキジムナちゃん」

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◆「宝」探し出す

 一九六七(昭和四十二)年に始まった光触媒の研究は平成、令和と三つの時代をまたぐ。「環境問題にある程度使われるようになったから、次はエネルギー問題に行く」と藤嶋さん。

 国は新たなエネルギー源として、二酸化炭素の再利用を目指すチームを二月に新設。安倍晋三首相が国際会議で藤嶋さんの名前を挙げ、光触媒が鍵を握るとも言及した。

 「物華天宝」

 川崎市の県立川崎図書館で四月にあった講演会で、藤嶋さんは色紙にそうつづった。「物は科学技術、華は成果。私の解釈は『科学技術を使って、天に隠された宝を探し出すんだ』と。誰もが天寿を全うできるように寄与することが、科学技術の目的ですから」

 

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