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【神奈川】

復興進む故郷・女川に「色を添えたい」 相模原の絵本作家、自身の絵を飾るプロジェクト

「新しい春」と題した絵を描き上げた神田さん=宮城県女川町で

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 東日本大震災で大きな被害に遭った宮城県女川町の出身で絵本作家の神田瑞季さん(24)=相模原市=が、復興が進む故郷に自身の絵を飾るアートプロジェクトを進めている。学生時代には震災がれき置き場に壁画を描き、町民を勇気づけた。津波で浸水した土地は盛り土され、住宅や商業施設が続々と建つ女川。「新しい町に色を添えたい」と意気込む。

 プロジェクトの一環として四月十七日、縦一・八メートル、横一メートルの板四枚に描いた大作を女川町役場に寄贈した。題は「新しい春」。生命力があふれる力強い幹に、濃淡のあるピンクの花が咲く。

 前日、「一人一人に本当の春、明るい日が来るように」とイメージし、三時間で一気に描き上げた。受け取った須田善明町長(46)は「町の桜が満開。ここも満開になった」と喜んだ。

 震災が起きた時、神田さんは町立女川第一中の三年生。行政区長だった祖父明夫さん=当時(77)=は地域の住民を避難誘導する中で亡くなった。慣れ親しんだ家々は押し流され、がれきの山が残った。

 小学生の時から絵画教室に通っていた神田さんは、絵を通じて震災と向き合ってきた。震災直後、浸水した自宅に残っていた画材で描いた、がれきの山を見つめる子どもたちの後ろ姿のイラストは、復興支援の絵はがきになった。

 「まちはグレー一色。みんなの気持ちが少しでも明るくなれば」と、がれき置き場の壁などを木や花の絵で飾った。

 絵はがきが東京の出版社の目に留まり、高校生の時、震災を題材にした絵本の作画を担当することが決まった。童話作家が書いたのは、津波で大切な人を失った少女が少しずつ笑顔を取り戻す物語。「悲しいシーンはすらすら描けた。明るい場面は、どうしても筆が進まなかった」。三年近くかけて仕上げた。

 震災から八年が過ぎた。女川のがれきはなくなり、穏やかな青い海の近くに、緑が美しい広場や白い駅舎ができた。自身は山形市の大学でデザインを学び、就職のため関東へ。故郷を離れて作家として活動する中、「自分にできることは何か」と改めて思い、三月からプロジェクトを始めた。

 今後、女川の自然から着想を得た十点ほどの作品を町に寄贈する予定だ。来年三月には、町で個展を開きたいと考えている。「自分ができることは絵を描くこと。祖父のように、女川の人たちに尽くしたい」とはにかんだ。

 

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