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【神奈川】

<かながわ未来人>「生きる」が国際公募展入賞 押し花作家・石渡美弥子(いしわた・みやこ)さん(72)

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 「生きる−希望の光を求めて−」。そう名づけた押し花の絵画が、昨年の国際公募展で入賞した。

 輝くようなガーベラの花に向かって、ちりばめられた透かし葉の数々。漂白して、葉脈だけを使った奄美大島のオオバキの葉は「私の心臓です」と語る。

 つらい治療に耐え、病気と向き合う長男俊行さんを思って、さまよう母の胸の内を表現したという。張り裂けそうな心臓の鼓動も。「一日でも、一時間でも」。そう願いを込めた。

 表彰式から四日後の昨年十二月二十四日、俊行さんが川崎市の自宅で息を引き取った。四十五歳だった。

 サッカーJ1川崎フロンターレの名物サポーターで、地域密着の礎を築こうと奔走した俊行さん。小柄だが、残した足跡の大きさから「川崎の小さな巨人」とも呼ばれたという。

 それから四カ月。石渡さんは自ら主宰する押し花教室の仲間とともに、恒例となった春の作品展に入賞作を展示した。

 「今年は無理かなと思ったけども、あの陽気に走り回っていた息子が、悲しんでいる母親を喜ぶはずはありませんから」

 実は石渡さん自身も、難病の全身性エリテマトーデスを患った。激しい関節痛などで、手を使うことも、歩くこともままならない日々。二十年ほど前、そんなさなかに出合ったのが押し花だった。

 「当時は何もできなくて、本ばかり読んでいた」と石渡さん。自宅近くの図書館に通ううち、館内に飾ってあった押し花に目をとめた。「きれいだなあ」。ピンセット一本で多彩に表現できる魅力に導かれて、すぐに習い始めたという。

 幼いころから茶道や生け花に親しんだ経験もあって、二〇〇二年には押し花指導者に。地元の川崎大師周辺などで教室を開くとともに、国内最大級の公募展とされる「世界押し花絵芸術祭」でグランプリ獲得など、受賞歴は華々しい。

 いつも押し花を携えて、「こうしたら?」と作画に悩む生徒たちの作品にそっと添える。作品力がぐんと増すさまに「まるで神の手」と歓声も。指導者資格があるのに教室を離れず、支えてくれる仲間もいる。

 「ピンセットを持てるうちは続けたい。だから、私は生きる」 (石川修巳)

<押し花> 花や葉を平面に押して乾燥させたもの。技術や道具が進化し、果物や野菜なども押し花にできるように。複数の団体がそれぞれ教室や指導者資格を認定しており、石渡さんが所属する愛好団体「ふしぎな花倶楽部」によると、指導者や愛好家の会員数は約1万8000人。

 

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