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【神奈川】

<かわさきリポート>週20時間の壁、打ち破る 「短時間雇用」市プロジェクト

梱包作業などで週30時間働く男性。精神障害があり、昨年8月の採用時は週8時間からのスタートだった=川崎市高津区のNENGOで

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 働きたいし、働ける。けれども症状に波があり、長時間働くのは難しい障害者にとって、就労を後押しするはずの制度が思わぬ「壁」になっている。民間企業が障害者を雇用しても、週20時間以上でないと雇用者数にカウントできないためだ。そんな「週20時間の壁」を打ち破ろうと、川崎市が提案する新たな働き方とは。 (石川修巳)

■「働く実感」手に

 初めの一歩は「週八時間」だった。精神障害のある男性(28)は昨年八月、建築・不動産コンサルティング会社「NENGO」(川崎市高津区)で、塗料缶を荷造りするアルバイトとして働き始めた。

 男性はかつて大規模商業施設のバックヤードで働き、体調を崩していた。「また働き始めても、神経痛で病院に通わないといけないかな、と不安だった」と打ち明ける。

 それから一年。オーダーメードで調色された塗料の小分けや伝票入力など、業務の幅は広がった。就労時間も段階的に増やし、五月からは週五日、六時間の週三十時間勤務に。気がつけば「壁」を超えていた。

 「徐々にだったから、体調管理もしやすい。多少なりとも『働いているなあ』という実感がある」とほおを緩めた。職場の先輩、渡辺あづささんは「まじめで堅実。表情が採用当時と全く違って、柔らかくなった」と語る。

■「雇ってもゼロ人」

 障害者雇用促進法は原則、週三十時間以上働く障害者を一人とカウントし、二十時間以上三十時間未満は〇・五人。それを基に、一定規模以上の企業に2・2%の法定雇用率(従業員に占める障害者の割合)の達成を義務づけている。

 「つまり二十時間未満の場合、何人雇ってもゼロ人とみなされてしまう」と川崎市障害者雇用・就労推進課の平井恭順(やすゆき)さんは指摘する。障害者の雇用を促す制度が、初めの一歩を阻む壁にもなっている形だ。

 長時間就労が難しいケースが多いとされる精神障害者は市内に約一万一千人。年7%のペースで増えているという。「短時間なら働ける人の活躍の場は少ない。そこで二〇一六年、自治体で初めて取り組み始めたのが『短時間雇用創出プロジェクト』でした」

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■3年間に58人就職

 目指すのは週二十時間未満の多様な働き方、雇い方の実践だ。協力会社を開拓し、就労援助センターなどとともに、障害特性を踏まえたマッチングや定着を支援している。

 業務は、清掃業者の手が入らない扇風機や加湿器などの掃除、書類の電子データ化など。無理して仕事をつくるのではなく、社員が時間を割いてやっている雑務などを切り出して任せることで、「短時間雇用が戦力になる」と平井さん。

 この三年間に市内の製造業や介護、医療など五十五社・団体に、のべ五十八人が就労を果たした。うち四十八人は、採用当時は週十時間未満という「小さな第一歩」だった。

 六月には雇用促進法改正案が成立。短時間雇用の支援策として、週十時間以上二十時間未満の障害者を雇う企業に対し、給付金が支払われる仕組みが新たに盛り込まれた。

 「個々の可能性をもっと生かせる社会づくりへのヒントが垣間見られる」。市は三年間の実践を一冊にまとめた「やさしい雇用へのアプローチ」で、そんな成果も見いだしている。

全国の自治体に先駆けて、障害者の短時間就労に取り組んだ川崎市の実践記録

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