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【神奈川】

<良い本を読もう 藤嶋昭>かこさとし先生との出会い 私の好きな絵本3冊

 今から十五年前、川崎市高津区のかながわサイエンスパーク内に、光触媒の原理や製品を紹介する「光触媒ミュージアム」をつくりました。

 子どもにも関心を持ってもらうため、施設の入り口に発行部数が百万冊以上の童話を置くことに。当時、百冊ほどあったミリオンセラー童話の中に、「からすのパンやさん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」「はははのはなし」と、かこさとし先生の本が三冊も入っていたのです。

 これが縁で先生に講演を依頼したり、科学絵本「太陽と光しょくばいものがたり」を一緒に執筆したりして、未来の科学と子どもたちについて話し合いました。この本は英語版や中国語版もできて、世界中の方々に読んでいただいています。

 かこ先生は昨年五月、九十二歳で亡くなられました。先生が手がけた六百冊以上の本は、どれもすばらしい内容です。今回はその中から、私の好きな三冊を紹介します。

◆どろぼうがっこう(偕成社)

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 かこ先生が「どろぼうがっこう」と題した紙芝居を子どもたちに最初に見せたのは一九六〇年。化学会社の研究所に勤めながら、川崎で子どもたちの教育を支援するセツルメント活動をされていた時です。ちょうど執筆中だった博士論文の下書きの裏に、走り書きして演じたそうです。

 これが予想に反して大好評で、子どもたちに何度も催促されたとのこと。絵本の初版は七三年で、これまでに百刷以上にも。本当に面白いお話です。

 五年前に先生ご夫妻と一緒に、紙芝居をしていた公園を訪れました。かこ先生の楽しそうな顔を今も思い出します。

◆かわ(福音館書店)

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 大きな川の流れも、山の上の方でしみ出た一滴、一滴のしずくが集まるところから始まります。さらに雪解け水や雨水も加わりながら、険しい崖の間を流れる川は勢いを増して岩をくだき、平野に出ると川幅が広くなって、緩やかに流れていきます。

 かこ先生は川崎に長く住んでいたので、多摩川がどのようにできているかを考えながら書かれたのだと思います。川を中心に、自然や人々の暮らしが詳しく描かれています。

 先生ご夫妻とともに、上皇后美智子さまと本についてお話ししたことがあります。美智子さまは、この「かわ」が好きですよ、とおっしゃっていました。

◆万里の長城(福音館書店)

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 中国一の名所と言えば、万里の長城でしょう。全長は秦代、漢代などに築かれた部分を含めると二万一千キロ以上にも。私自身も十回以上訪れていますが、その大きさ、長さに驚くばかりです。

 この本は中国の歴史とともに、万里の長城の成り立ちが解説されています。しかも絵でまとめられているので、理解しやすい。各時代の皇帝をはじめ、孔子や孫子などの思想家、李白や杜甫(とほ)などの詩人も紹介されていて楽しい一冊です。

 かこ先生の本のうち、「ピラミッド」や「ならの大仏さま」も、内容の深さや歴史的な事実との関わりの点ですばらしい作品です。ゆっくりと、しかも何回も読むべき本です。

◆感想文を募集 

 本欄は毎月一回程度、掲載します。紹介した本を読んだ感想文(四百字程度)をお寄せください。郵送やファクス、電子メールに書名と住所、氏名、電話番号を明記し、川崎支局(送付先は本ページ題字下)へ。

<ふじしま・あきら> 1942年3月生まれ。77歳。川崎市中原区在住。東京大学大学院在学中の67年、酸化チタンに光を当てると、水を酸素と水素に分解する「光触媒反応」を発見。汚れ防止や抗菌、空気浄化などに応用されている。2017年文化勲章、18年川崎市名誉市民章。現在は東京理科大栄誉教授。

 

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