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【神奈川】

<2019・かながわ 取材ノートから> (2)横浜市のカジノ誘致

市民説明会の会場前で抗議行動をする反対派の市民ら=横浜市神奈川区で

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 林文子横浜市長がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を表明した八月の記者会見の取材メモをめくってみた。誘致について「白紙」としてきた態度を変えた理由、ギャンブル依存症や治安への市民の不安にどう対応するかなどの質問が相次ぎ、林市長は「丁寧に説明する」と十回以上繰り返した。私が「説明して市民の理解を得られたかどうか、どう判断するのか」と尋ねると、「説明を続け、都道府県との協議と公聴会の実施、議会の議決を経ていく」と答えた。

 少なくとも私には、かみ合わないやりとりだった。県との協議や議決などはIR整備法にのっとった手順だが、市民の理解や合意を直接はかる機会ではない。丁寧な説明は当然のこと。カジノ自体に加え、市長が誘致の方針に転じた経緯にも多くの市民が反発する中、民意とどう向き合うのか。市政の担い手の意識が問われる局面だと考えた。

 その後の市議会や会見でも「丁寧に説明する」と繰り返し、今月から始まった市民説明会。これまで五つの区で行われ、林市長は市財政の見通しやIRの経済効果をふまえ、誘致の必要性を訴えている。ただ、参加者の質問や意見の大半は「デメリットの検討が少ない」「なぜ市民の声に耳を傾けないのか」など、林市長に異を唱える内容だ。

 九日の神奈川区の説明会では、参加者から「丁寧な説明と合意形成は次元の違う話。市民との合意形成をどう証明するのか」という質問が出た。答えに注目したが「説明会を繰り返しやる中で理解を得ていく。都道府県との協議や公聴会、議会の議決など民意の反映方法が規定されている」。質問した人は八月の私と同様に民意の把握について尋ねたはずだが、この日もそこはすっぽり抜けていた。

 十九日の金沢区の説明会では「住民投票で市民の考えを聞くべきだ」という意見が出たが、やはり同じような回答だった。説明は続けるが、民意を直接はかる意思はない−。八月以来の変わらぬ回答から、そんなメッセージを読み取るのは私だけではないだろう。

 「説明会が始まってから市民の反応が良くなった」。林市長のリコール(解職請求)を目指す政治団体「一人から始めるリコール運動」の広越由美子代表(40)は明かす。九月から街頭活動を続け、必要となる署名集めを担う受任者を一万一千人以上確保した。今月に入ってから、一日で三百人得られる日もあるという。「市長の説明に納得できない人が多いことの証し」。ほかに、住民投票を目指す市民グループも同様に受任者集めの輪を広げている。

 市は来年も説明会を行いながら実施方針の策定準備を行い、事業者の公募・選定に進みたい考えだ。それに伴い、市民による反対運動も本格化が見込まれる。「丁寧な説明」の先を注視していく。 (杉戸祐子)

 

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