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【神奈川】

<守れなかった命 川崎中1殺害事件から5年 子どもたちの今> (中)川崎区地域教育会議議長・宮越隆夫さん(72)

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 殺害された上村遼太さん=当時(13)=が川崎に来るまで住んでいた島根県の西ノ島は、豊かな自然環境に恵まれ、移住しての「留学」も受け入れているような場所だった。地方の方が良いと断じるつもりはないが、自然が少ない川崎に移って一年足らずで事件に遭ったことを考えると、都市部での育ちがゆがんだ形で出たのでは、と胸が痛む。

 ただ、自然が少ない環境でも子どもたちがほっとできる場を作ることはできる。子どもが活躍して地域から認められる経験は、あのような事件を生む土壌をなくしていくことにつながると考えている。地域教育会議は住民主体の教育組織で、学校などと連携して子どもたちを支援する。川崎区の会議は昨年十月に三日間、富士見公園で「パークチャレンジ」と題したイベントを打った。狙いは楽しい外遊び場づくりで、企画から子どもたちと準備した。

 初日は台風19号が直撃したが、翌日はみんなで巨大迷路やミニアスレチックなどの遊び場をつくった。大人も子どもと真剣に関わり、多世代が一緒にイベントを作り上げた。期間中は小雨も降ったが、子どもたちはかっぱを着てたくましく遊んだ。ステージではダンスで子どもと若者が大盛り上がりだった。仕掛け次第で子どもの居場所をつくれると実感した。

 ただ、何もないところから準備するのは本当に大変だったし、子どもたちももっと落ち着いてやりたかったと思う。市には、高津区の市子ども夢パークのような常設の子どもの居場所を川崎区に整備するように長年求め、地域教育会議が市議会に出した請願は二〇一一年に趣旨採択されていた。そんな居場所があれば、上村さんが見つけられなかった地域の居場所の一つになったかもしれないし、事件を未然に防げたかもしれない。

 放課後や休日に学習支援や体験教室をする「地域の寺子屋事業」にも取り組んでいる。寺子屋は学校と違った形で子どもたちを応援する。リタイアした地域住民らが子どもに寄り添い、多世代が交流できる子どもの居場所になっている。大人たちも子どもの笑顔に元気をもらっている。

 事件以降、子ども食堂開設の動きが広がり、大人と子どもが触れ合うチャンスが増えたことは一つの進展だと捉えている。ただ、子どもたちはとても忙しい。塾や習い事に追われて自由な日がない子も少なくない。さらに、スマートフォンでの友達同士のやりとりなどで内向きに忙しい。

 そういう時代だからこそ、アナログな手触りのある体験こそ大切。やれば今どきの子も魅力を感じてくれるはずだ。今後も子どもたちがほっとできる居場所づくりや、思い切り遊べる場、若者のエネルギー発散の場づくりを続けたい。 (聞き手・大平樹)

<みやこし・たかお> 川崎区地域教育会議議長、同区臨港中学校区の「地域の寺子屋事業」コーディネーター。1991年、市立渡田小学校のPTA会長。98年から臨港中学校区地域教育会議事務局長となり、青少年の地域での活動支援や教育に住民らと取り組んでいる。

 

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