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【神奈川】

敗訴に「何のため2年間」 障害児就学先訴訟 会見に両親の姿見えず

 「ナンセンスな判決だ」。退廷する裁判官らの背中に、傍聴席から怒りの声が飛んだ。人工呼吸器を付けて生活する川崎市の光菅和希君(8つ)と両親が地元小学校への通学を求めた訴訟で、横浜地裁は十八日、請求を棄却する判決を言い渡した。和希君の父伸治さん(51)と母悦子さん(50)はうなだれたまま、無言で法廷を後にした。 (安田栄治)

 両親は、判決後に横浜市内で行われた原告団の会見に姿を見せなかった。大谷恭子弁護士によると、伸治さんはひと言も発することができなかった。悦子さんは終始泣いているほど落ち込み「何のために二年間やってきたのか」と嘆いていたという。大谷弁護士も「証拠審理は何のためにしてきたか。この判決なら申し出を出した翌日にもできた」と怒りをあらわにした。

 和希君は障害のある子もない子も一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」を幼稚園で体験している。今も、指定された特別支援学校にほとんど行かないが、地元小学校で授業を受けられる週一回の「交流」は和希君のお気に入りだ。伸治さんはこれまでの審理で「小学校で(児童に)おはようとあいさつされ、自分もあいさつしようと努力するようになった。友だちと向き合って何かをやろうとする姿勢も見えていた」と訴えてきたが、本人や保護者の願いは受け入れられなかった。

 会見で大谷弁護士は「日本のインクルーシブ教育を問う裁判だったが、裁判所が全く理解していなかった。公園やスーパー、スケート場で人工呼吸器を持った親子を見かけるのに、学校だけはなぜ排除されるのか」と首をひねる。「判決に至るまでの裁判官の悩みを感じられなかった。ここまで露骨に日本の裁判が遅れているとは思わなかった」と批判した。

◆「思い通じるかと…」落胆の支援者

 請求棄却の判決を受け、川崎市内の障害者支援関係者らにも落胆が広がった。

 「今なら思いが通じると思ったのに」と肩を落としたのは、多摩区の障害者支援事業所「サポートセンターロンド」の谷みどり代表(68)。相模原殺傷事件で障害者の権利が注目される中、原告の光菅和希君本人が希望する学校へ通える結果が出て「重い障害があっても幸せに生きる権利があるという当たり前のことを社会で共有できる」と思っていたからだ。

 ロンドの、就学前の子どもたちを対象にした児童発達支援事業で三年近く、和希君を受け入れていた。「お母さんと離れて通う中で成長がみられた。地域の学校に通うのが希望であれば、実現させたいと思う」

 障害者や家族の支援に取り組むNPO法人わになろう会(中原区)代表理事の新井靖子さん(81)は、元教員で障害児教育に詳しく、「障害が重くて学習がなかなか進まない子でも、皆の中にいることで、皆との関係がつくれて成長する側面があった」と振り返る。

 和希君の母親悦子さんが、幼稚園での体験をもとに「たくさんの友達の中ですごして刺激を受け、学習意欲を持ち、楽しく学校生活を送る」ことを希望していたことに「就学先の決定に、親の思いだけが必ず正しいということはなくても、十分に思いを酌んだ話し合いが必要だった」と語った。 (山本哲正)

 

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