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【暮らし】

<家族のこと話そう>理不尽な父から学んだ ブラック企業と闘う労組委員長・清水直子さん

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 誰でも一人から加入できる労働組合で、不安定な労働や生活を強いられる仲間と一緒に、働く人に理不尽を強いる会社を相手に闘っています。二月には、大きな労使紛争となった「アリさんマークの引越社」で知られる引越社と全面和解を実現しました。おかしいことはおかしいと声を上げる。そして、自分の周りをより良くしていく。ある意味で、父親との関わりを通じて学んだのかもしれません。

 家は、群馬県のリンゴ農家。戦争中に祖父たちが開墾したものです。父が勤めを辞めて専業農家になると、祖父のように工夫できず、家は貧乏になっていきました。父は、ままならなさを人のせいにすることで精神の安定を保っていたようで「おまえのせいだ」「誰が食わせてやっている」と母をなじりました。

 父が母を責める理由は、まったく理不尽なものでした。農家の嫁である母は、朝から晩まで働きづめなのに自分で自由にできるお金を持てません。対抗する力がなく、食事を減らし、やつれていきました。そんな母がもどかしくても子どもとしては何もできない。悔しかったです。

 しかし、高校生になったある日、私の背丈も父に近づき、力でねじ伏せられない自信が付いたのですね。いつものように父が母をなじった時、私は割って入って言いました。「お母さんは働いているじゃないか。人のせいにするな。恥ずかしくないのか!」

 娘に罵倒され、気おされて父は出て行きました。私は、これは使える!と思いました。罵倒も、ただ罵倒するだけではない。相手の言うことに、一つ一つ反論の根拠を挙げ、論理的に罵倒するのです。

 それは今、プレカリアートユニオンでやっていることと通じるものがあります。職場で理不尽な目に遭って、おかしいと思いながら、泣き寝入りしている人があまりにも多い。でも、やり返す方法や力を私たちは持っているのです。それを使って、状況を変えることができるんだと。おかしいことにはおかしいと言う力を持てることを、父に教わったと言っていいでしょう。

 父母は二十年ほど前に離婚。子どもたちも家を出て、何度はたらきかけてもごみを捨てなくなった父は、昨年の年明けに、脱水症状を起こして発見されました。一人暮らしは難しく、今は施設に入居しています。ごみ屋敷は、昨年一年かけて片付けました。

 いつもけんかばかりしていた父ですが、施設で安心して介護を受けられるからこそ、一、二カ月に一度、会いに行く時には、「今だけは優しくしよう」と思えば、できるものですね。これも一種、親子関係をやり直しているようなものでしょうか。

 聞き手・三浦耕喜/写真・木口慎子

<しみず・なおこ> 1973年東京都生まれ、群馬県育ち。96年中央大卒業後、労働問題の専門誌を経て、98年よりフリーライターに。非正規が中心の個人加盟の労働組合の活動を経て、2012年4月にプレカリアートユニオンの結成に参加。現在、執行委員長。

 

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