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【暮らし】

悠々自適は嫌!? 働きたい!70代80代

白と赤の旗を振って交通誘導をする中島芳之さん=名古屋市で

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 高齢になっても家に閉じこもるのではなく、まだまだ働きたいと考える人が増えている。長年勤めた会社を退職後、別の職を見つけたり、働き慣れた現場にパート従業員として残り続けたり。十七日の敬老の日に合わせて、働き続けているシニアに、その思いを聞いた。 (河郷丈史)

 「車、通りまーす!」。九月上旬、名古屋市中川区の建設現場で、同市緑区の警備員、中島芳之さん(72)は白と赤の旗を振りながら、歩行者や車を誘導していた。二年前に未経験で始めた仕事だが、「安全に関わるとても重要な仕事」とやりがいを感じている。

 市内の木材会社で営業職として長年働き、定年後も顧客管理の仕事を任され、七十歳を目前に退職。その後、就職説明会に参加し、市内の警備会社「エナジー」に採用された。初めは慣れない仕事に戸惑ったが、主に住宅建設現場の交通誘導を任され、週三、四日ほど勤務している。

 前の会社を退職したときは「もう仕事なんてやらない。悠々自適に暮らすんだ」と思っていた。だが、三カ月ほどたつと、本を読むかテレビを見るかの生活に嫌気が差し、「何かがしたい」と思うように。

 営業成績を上げることに追われていた若いころは、「自分のために働いている」という感覚だったが、今は「世の中のため」という思いが強く、働くことの意味が変わったと感じる。再就職後、休日も時間配分を考えるようになり、生活にメリハリが出てきた。

ストッキングの包装の乱れを整える佐原邦子さん=愛知県豊橋市で

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 愛知県豊橋市の婦人靴下の出荷などを手掛ける会社「パリシェ」で、パート従業員として働く佐原邦子さん(83)は、中国から入荷するストッキングなどの包装の乱れを整えるのが仕事。百人いる従業員の最高齢で、七人の作業グループでリーダーを務める。

 二十代のころに入社して数年間働いた後、二人目の子どもを妊娠し、子育てに専念しようと退社。四十歳ぐらいのとき、パートとして再入社し、四十年以上働き続けてきた。「気づいたらこの年齢になっていた」と振り返る。

 今の勤務時間は午前八時半〜午後三時で、二回の休憩を挟んで立ちっぱなしの作業。毎朝、グループで一番早く出社し、メンバーに仕事を割り振る。見た目が良くない製品をきれいにすると気分がいいし、「お客さんはお金を払って買うんだから」と責任も感じる。

 仕事が好きで当たり前のように働いてきたので、その意義についてあまり考えたことはない。ただ「うちばかりにこもっていると、社会のことが分からない。人と接さないと」と思う。

 年齢に関係なく、体が動く限りは働き続けるつもりだ。「人間、年々、あそこが悪い、ここが悪いとなるもの。仕事をしているときの方が順調です」

 高齢者の悩みの相談を受け付けているシニアライフアドバイザーの畑島美奈子さん(73)は「高齢者が生きがいを感じて暮らすには、自分が何かの役に立つ、誰かに必要とされる、という感覚を持つことが大切」と話す。中島さんと佐原さんについて「大上段に構えるのでなく、お客さんの喜びや歩行者の安全など、身近なことをやりがいにしている点がいい」と拍手を送る。

 

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