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【暮らし】

<寄り添ってはいるけれど 被災地支援の陰で> (上)見えないゴール

被災から数日後の天応地区。雨で押し流された車やがれきが道路をふさいでいた=広島県呉市で(山田さん提供)

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 豪雨や地震などの被災地で、被災者を支える行政関係者やボランティアらの精神的負担を懸念する声が強まっている。人のために尽力しながら評価されることは少なく、復旧作業が長期化するに伴いストレスがたまっていくという。口に出せない支援者の苦悩。七月に発生した西日本豪雨で深刻な被害を受けた広島県呉市を訪ね、支援者の声を聞いた。 (花井康子)

 「暑いけん、倒れんようにしてよ」

 呉市社会福祉協議会地域福祉課主事の山田尚輝さん(25)は、床上浸水の被害を受けた家屋で泥を拭き取っていた高齢女性に、優しく声を掛けた。被災者のニーズの把握も仕事の一つだ。

 発生直後から、市内でも被害が大きかった天応地区のボランティア拠点に入り、県内外から来るボランティアに対応している。

 家屋にたまった土砂やがれきの撤去などに協力してくれるボランティアの割り振りが主な業務。毎日平均約百人で作業を続けている。人手は足りず、ひっきりなしに携帯電話が鳴り続ける。「たんすを早く運び出してくれ」「ボランティアを頼んだのに来ない」…。怒声を浴びせられることもしばしば。無理な要求も多く、言い返したくなることもあったが、いつも言葉をのみ込んだ。「一番大変なのは、被災者じゃけん」

 ボランティアの安全を守ることも仕事の一つ。土砂をかきだす作業は家屋によって危険度が違うため、安全にできるのか判断するのは容易ではないが、それをするのは山田さんしかいない。責任感がずしりとのしかかった。

 七月中旬、ボランティアらが各所に散っての作業中、急に激しい雨が降り始め、避難指示が出ると、ボランティアの家族からの問い合わせの電話が殺到した。「うちの子は安全なのか」。「危険はありません」と答えるしかなかったが、正直、激しい雨に不安は消えなかった。

 泥まみれで足場の悪い現場に酷暑が襲う。四〇度近い猛暑は確実にボランティアらを消耗させ、熱中症で倒れ込む人が相次いだ。「皆、思いを持って来てくれた人たちばかり。そんな人たちに何かあってはいけん」。そんな思いが頭から離れず、緊張感が途切れることはなかった。

 被災から二カ月半。ボランティアの要請やスタッフとの調整連絡などで毎日、電話が鳴り続ける。早朝から夕方まで続く作業の合間に食事を取り、座ることはほとんどない。毎日、午後九時には布団に倒れ込む。

 知人の勧めで八月、日本赤十字の支援事業の一環「こころのケア活動」に参加し、臨床心理士のカウンセリングを受けた。雑談を交えながら十分ほど話し合う。「苦情が多くて」「緊張ばかり」…。ぽつり、ぽつりと悩みを打ち明けると、少し気持ちが楽になった。「気付かないうちに、自分を追い込んでいたのかもしれない」

 終わりが見えない作業は今も続く。それでも「すべて元通りにはできなくても、できる限りのことはしたい」。少しだけ肩の荷を下ろし、前を向いた。

<西日本豪雨> 台風7号などの影響で、7月5〜8日、西日本を中心に集中豪雨が襲った。消防庁によると、広島県内で109人が死亡。岡山県で61人、愛媛県では28人が亡くなった。住宅被害は広島県で全壊1089棟、岡山県4478棟、愛媛県600棟に上る。 (9月10日現在)

 

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