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【暮らし】

負担にならないお墓にする 墓じまい、近くに改葬 全国で増加 

改葬した墓の前でお参りする佐藤潤一さん(右)と妻広美さん=愛知県愛西市の大法寺で

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 先祖代々の墓を墓じまいしたり、遠方にある墓から遺骨を自宅近くに改葬したりする人が増えている。掃除やお参りを永続的にお寺などがしてくれる墓を選ぶ人もいる。将来、子や孫の負担にならないようにと、「墓の簡略化」を検討する人が増えているが、一体、何からしたらよいのか。昨年改葬した愛知県の夫婦のケースを聞いた。 (出口有紀)

 大きなクスノキの木が立つ芝生の広場に、一辺が十五センチや二十五センチでほとんど高さがない四角い石が並ぶ。ここは愛知県愛西市の大法寺の霊園。ずらりと並んでいるのは墓石だ。同県あま市の会社員佐藤潤一さん(67)と妻広美さん(60)は、そのうちの一つの手前で膝を地面に付けて手を合わせた。「月に一度、お参りに来ていますが、遊びに来るような感覚かな」

 佐藤さん夫妻は昨年十月、自宅から近いこの霊園に、名古屋市内にあった広美さんの実家の墓を移し、自分たちが入る墓もつくった。潤一さんは三男で実家の墓には入らないため、夫婦が入る墓が必要。だが、長男(35)が近くに住んでいるものの、婿入りしている。広美さんは二人姉妹の長女で、妹も他家に嫁いでいる。母は八十代になり、墓の管理は体力的にきつくなってきた。

 自分たちの墓を建てても、将来、長男の負担になりかねないことや、広美さんの実家の墓を守っていく人がいないことについて夫婦で話し合った。そして、墓守の必要がない永代供養のタイプがあるこの霊園に、二つの墓をつくることを思い立った。

 その考えを広美さんの実家に伝えると、父は反対したが、母と妹は賛成。昨年五月に父が亡くなった後、あらためて話し合い、墓じまいの準備を進めることにした。

 必要な手続きは、(1)広美さんの実家の墓があった霊園や改葬先の霊園への相談(2)墓石の撤去などを頼む業者選び(3)元の墓の埋葬証明書の入手(4)改葬先の自治体への改葬許可の申請−などだったが、(2)の石材業者が(3)と(4)を代行してくれた。広美さんの実家の墓には、父やご先祖の骨を粉にして納めた。一連の費用は約百五十万円だった。

 夫婦の墓には「佐藤家縁者 ここに集う」と記した。潤一さんの次兄夫婦も近くに住んでおり、潤一さんは「『墓を買うくらいなら、ここに入って』と言うつもり。『縁者』だから、みんな入れる」とほほ笑む。広美さんは「思ったよりスムーズにできた。でも、体は衰えていくから早めに動いた方がいい」と話す。

      ◇

 厚生労働省の衛生行政報告例でも、全国の改葬の件数は増加傾向だ。二〇〇七年度の七万三千九百二十四件に対し、一七年度は十万四千四百九十三件。佐藤さん夫妻は「定年退職などの節目に、夫婦で話し合っておくと心構えができる。終活フェアに行って情報収集したり、いろいろな寺院を回ってみたりするのもいい」と助言する。

 大法寺では、ここ三年ほどで墓じまいなどに関する相談が増え、月十〜二十件が寄せられるという。佐藤さん夫妻が選んだ形の墓は、一五年四月から現在までに約三百基が建立されている。同寺の長谷雄蓮華(はせをれんか)住職(46)は「子どもに迷惑を掛けたくないと、永代供養付きの墓を選ぶ人が増えている。遠方にあり、会ったこともない先祖の墓の管理を重荷に感じる人もおり、今まで通りの墓が必要なのか、考えてみるのも大事では」と話す。

 

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