東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

「介護保険の支援 不安」 専門性確保 見通せず

「自力で立てなくなると、自宅での生活が大変になる」と話す佐藤美知江さん=神奈川県内で

写真

 「リハビリのおかげで今は自力で立てている。でも、十分なリハビリができなくなったら、介護してくれている八十歳をすぎた母を困らせてしまう」。重い脳性まひがある神奈川県の佐藤美知江さん(68)の表情が曇る。

 週二回の重度訪問介護を受け、車いすを使って自宅で両親と暮らす。自宅で生活できているのは、市内にある県営の重度身体障害者向けデイサービスで受けているリハビリのおかげでもあるが、デイからは近いうちに高齢者向けの施設などへ移るよう言われている。

 デイには十五年ほど前から通っている。現在は週二回通い、そのうちの一回、理学療法士や作業療法士ら専門職のリハビリを受ける。食べたり、話したりするのも難しいが「胸の筋肉を鍛えるようになってから、水を飲んでもむせなくなった。専門職が丁寧にやってくれ、生かされている」と感じてきた。

 しかし、介護保険の対象になる六十五歳になると、状況が変わった。障害福祉サービス受給者証の更新手続きの頻度は自治体によって異なるが、佐藤さんの場合は一年ごとから三カ月ごとになった。そのたびに、書面でサービスが必要な理由を説明するよう求められる。毎回、詳細に記しているが「筋力が弱って、ヘルパーの助けを借りても書類を書くのは大変」と話す。

 施設でも、通所回数は変わらないものの、施設で週二回入っていた風呂は週一回になり、ショートステイはできなくなった。訪問介護で、ヘルパーの介助で入浴しているが「年老いてできないことが増え、滑りやすくなり、入浴が怖い。施設で機械浴ができると助かる」。

 施設を移るように言われたのは昨年九月。「別の受け入れ先を見つけて」と言われた。交渉してことしの三月までは通えるようになったが、それ以上の延長は難しそうな雲行きだ。

 この施設では、一般的に六十五歳以上の利用者には、同様のサービスをする高齢者施設などへ移ってもらっている。三カ月ごとの契約にし、その間を調整期間とし、別の施設を探してもらう。担当者は「見つからなくても、すぐにサービスは切らない。ただ、介護保険の施設を使える人が、うちの施設を使い続ければ県の財政上の負担になる」と話す。

 しかし、佐藤さんの不安は大きい。介護保険のデイサービスに変わることになれば、障害者のリハビリに詳しい職員はいないかもしれない。「体が衰えたら、自分でできることが減ってしまう」。さらに、介護サービスの利用料の負担が生じることを不安がる。「必要なサービスは受けられないのに、負担が増え大変になる」

 「六十五歳を過ぎても必要なサービスが受けられるかは、障害者が住む自治体で差がある。利用者が六十五歳近くになると心配になる」。愛知県春日井市などで視覚、聴覚障害者の就労継続支援B型事業所(B型)を運営するNPO法人「つくし」(名古屋市守山区)の村上栄子代表(66)は話す。

 つくしのB型では、七十代の利用者女性が、住んでいる市の担当者から「次の年は受給者証を更新しない」と言われた。村上さんらが市と交渉し、B型への通所日を減らし、引き続き、利用できるようにした。市は介護保険のデイサービスの利用などを提案するが、手話が必要な女性に適した施設は見つからない。

 村上さんは「女性は身の回りのことは自分ででき、要介護の認定が下りないかもしれない。通う場所がなくなれば、家に引きこもるだけ。本人の意向もくんでほしい」と訴える。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報