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【暮らし】

救いの制度に言葉の壁 進まぬ外国人の介護保険利用

「母の介護で介護保険の良さを実感した」と話す日系人ヘルパーの並里カテリーネさん=愛知県豊田市の保見団地で

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 四月の改正入管難民法施行で外国人労働者の受け入れが拡大される。定住が進み、高齢化も予想される一方、外国人でも介護保険が使えることが十分に知られていない。複雑な制度と言葉の壁が普及を阻む中、住民の半数以上を外国人が占める愛知県豊田市の保見団地では、リーマン・ショックなどで失業した外国人らがヘルパーや通訳となり、活躍している。さまざまな国の人たちが手を取り合い、地域の介護を支え合う現場を伝える。 (出口有紀)

 愛知県豊田市の訪問介護などの事業所「ケアセンターほみ」のヘルパーで日系ペルー人の並里カテリーネさん(42)は、母が昨年四月に八十歳で亡くなるまで、五年ほど介護した。

 母は肝臓がんなどを患った上、腰を痛め、同居の父(74)が主に介護。要介護3で平日は毎日、訪問介護を入れ、週三回ほどデイサービスも利用した。

 「母がデイサービスに行っている間、父はリラックスでき、精神的に追い詰められずに済んだ」。並里さんも仕事を続けられ「サービスがなかったら、どうなっていたか」と振り返る。

 法務省によると、在留外国人は昨年六月現在、二百六十三万七千人で過去最高。六十五歳以上は約6%の十七万二千人で徐々に増えている。介護保険では、国内に三カ月以上住み、住民基本台帳に登録された人は保険料を払えば介護サービスを受けられるが、制度を知らない人も少なくない。

 在留外国人が全国で二番目に多い愛知県が、二〇一六年度に実施した外国人県民アンケートでは回答した二千六百三人中、介護保険サービスを知っている人は15%で、加入者は8%。県の担当者は「就労目的だと、年金や介護保険に興味がない人もいる。市町村の窓口で配れる多言語のパンフレットを作りたい」と話す。

 ケアセンターほみでも、サービスの契約時に添える重要事項説明書のスペイン語、ポルトガル語版も作り、周知に力を入れる。だが、並里さんによると、どこに相談していいか分からない人も多いという。

 また、介護保険では、日本語が不自由な利用者を想定した通訳などのサービスがない。地域福祉が専門の金城学院大の朝倉美江教授(58)は「利用者が困っていることを正しく聴き取らないと、ケアマネは適切なケアプランを作れないし、利用者もケアマネの説明を理解しなければ、納得してサービスを受けられない。どの国の人にも通訳を保証する必要がある」と指摘する。

 一方、厚生労働省の担当者は「通訳の体制は検討していない」。介護保険計画課によると、サービスは排せつの介助など直接的な介護が対象で、担当者は「通訳にはそぐわないし、市町村からの要望もない」と話す。外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、政府が昨年末にまとめた対応策にも医療通訳養成の取り組みはあるが、介護通訳はない。

 現状では、ケアセンターほみが保見団地でボランティアで行っているほか、愛知県のNPOが高齢化する中国帰国者らに向け、中国語に特化した介護通訳を有料で派遣するなど、独自の取り組みに任されている。

 愛知県は一八〜二二年度の「あいち多文化共生推進プラン」に介護通訳の制度化の検討を盛り込み、準備を進める。県多文化共生推進室の担当者は「本来は国が進める外国人受け入れとセットで、外国人高齢者に配慮した環境を整える必要がある。介護保険のサービスメニューに入れてもらえれば、各地で通訳者養成の動きにもつながる」と話す。

 

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