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【暮らし】

<食べきりのすすめ学>(下)心理学から考える 小さい皿で食べ残し減少

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 せっかく作ったり注文したりした料理を、人はなぜ食べ残すのか−。学問的な観点からこの問いを考えると、食べ残しを減らす手だてが見えてくる。経済学に続いて心理学を応用してみると、ポイントは皿にあるようだ。 (河郷丈史)

 大小の皿に盛られた肉料理と野菜の付け合わせ=イラスト(1)。小さい皿の方がボリュームたっぷりで、見ているだけでおなかが膨れそう。でも実は、料理の量はどちらも変わらない。

 「頭で分かっていても、そのようにしか見えない。これは心理学では『錯視』と呼びます」。食行動の心理学を研究している同志社大心理学部教授の青山謙二郎さん(50)はこう話す。

 青山さんによると、人間は見たものをありのままに認識しているわけではなく、例えば、二次元で見た映像を脳の中で立体的に再現して認識したりする。この中で、認識と現実のずれが際立って見えるとき、錯視として表れる。直線が曲がって見えたり、同じ長さの二つの線が違って見えたり、さまざまな錯視があるが、皿のサイズによって量が違って見えるのは「デルブーフ錯視」と呼ばれる。

 「皿の大きさが変わると、食べる量も変わる」と青山さんは言う。大きな皿に料理を取っても少なく見えるため、気付かないうちに多めに取ってしまい、皿が小さくなるとその逆が起こるというわけだ。「人間は自分がどれだけの食べ物を胃の中に入れたのかを把握するのが苦手。『見た目』で食べた量を把握して、満腹感を感じている」

 皿のサイズは食べる量だけでなく、食べ残す量も左右するという。それを示すデータとして青山さんが例に挙げるのが、デンマークの研究者らが二〇一五年に発表した論文だ。

 この研究は、立食ビュッフェの昼食会で、直径二十四センチと二十七センチの皿を使った参加者の食べ残しをそれぞれ調査。その結果、大きい皿で食べた人たちの食べ残しは一人当たり二十グラムだったのに対し、小さい皿で食べた人たちは一四・八グラムだった。

 皿が小さい方が食べ残しが少ないと結論づけた研究はいくつもあるといい、青山さんはこう解説する。「同じ量の食べ残しでも、大きい皿を使ったときの方が小さい皿よりも少なく見える。結果として『これぐらいなら残してもいいかな』という量が多くなる」。サイズの違う二つの皿の食べ残し=イラスト(2)=を見比べてみると、確かに大きい皿の方が「まあ、これぐらいなら…」という気がする。

 また、皿のサイズが大きくなることで「自分の皿に取る料理の量が増え、食べる量も増えるが、もともと皿に取った量が多いので、結果的に食べ残す量も増える」といった要素も考えられるという。

 デンマークの研究は立食ビュッフェ会場という条件の下だったが、家庭でも応用できる。例えば、大皿料理を食べるときは、取り皿を小さめにするといい。それぞれの皿の食べ残し量を減らすことが期待できるし、大皿に料理がたくさん余ったとしても、箸をつけていなければ、冷蔵庫で保存すればいい。

 「私たちは知らず知らずのうちに環境の影響を受けている。皿はいつも使うので常に効き続ける」と青山さんは話す。食品ロスを減らすヒントは、われわれの心の働きにもあるようだ。

 

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