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【暮らし】

<平成を語る 先行き不安>消費の価値観が転換 経済ジャーナリスト・荻原博子さん

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 バブル経済の絶頂から崩壊、そして長期間の景気低迷と揺れ動いた平成。家計もその影響を大きく受けた。長引くデフレで給料が上がらない一方、医療費などの公的負担は増え、将来に対する不安感が強まっている。経済ジャーナリストの荻原博子さん(64)は、そんな時代を「デフレにより、消費者の価値観が変わった」と評し、「自分で合理的に選択する時代になった」と言う。 (聞き手・添田隆典)

 バブル経済の絶頂期に平成は始まりました。当時はまだ夫が稼ぎに出て、妻は専業主婦という「家庭内分業」が機能していました。サラリーマンは定年退職まで勤め上げるのが一般的で、十分な退職金と年金が保障され、老後の生活も安泰という安心感が社会全体にありました。

 それがバブル崩壊後の一九九〇年代後半から状況が一変し、二〇〇〇年代に入って加速しました。高度経済成長期から続いた終身雇用と年功序列が崩壊。右肩上がりだった給料が下がり、夫婦共働きや定年後も働かないと食べていけない家庭が当たり前になりました。自分がいつ、リストラや給与カットという目に遭うか分からないという不安が広がりました。

 そこで、妻も働きに出る必要がでて、共働きが増えた。しかし、それで家計が楽になったわけではありません。少子高齢化の影響で介護や医療費が急騰し、増税や社会保険料の負担が増えたからです。消えた年金問題もあった。少し前までは多くの人が安泰と思っていた老後は、不安だらけになってしまった。

 そうした中で深刻化したのが、物価が下がるデフレです。デフレにはものが安く買えるというプラス面もありますが、企業の収益が伸びず、いつまでも給料が増えないという大きなマイナスがある。

 ものの価値観も百八十度変わりました。かつてはマイホーム信仰がありましたが、いまの子育て世代は無理にローンを組んで家を買わなくなった。「高くて質のいいもの」より「手ごろでそれなりにいいもの」が支持されたのは、節約なしには家計を守れないと人々が自覚したからです。

 人口減少と高齢化がさらに進み、年金給付が抑えられることを考えると、節約の時代は当面続くでしょう。一方で、インターネットの普及で、安くていいものに関する情報に簡単にアクセスできるようにもなりました。若い世代は古い価値観に縛られず、自分で調べて、自分が納得できるものを選ぶことに慣れています。節約は確かに苦しいですが、そう感じるのはもはやひと昔前の感覚かもしれません。合理的にものを選ぶようになったということも、平成という時代の特徴です。

<おぎわら・ひろこ> 1954年、長野県生まれ。大学卒業後、経済事務所に勤務し、82年、フリーの経済ジャーナリストとして独立。生活に根差した視点から経済の仕組みを、新聞や雑誌、テレビ、ラジオで解説。近著に「投資なんか、おやめなさい」(新潮社)、「老前破産」(朝日新聞出版)など多数。

◆中間層減り格差拡大

安い外食店に行列ができ、年金への信頼性も揺らいだ(写真はコラージュ)

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 平成の家計は、増税と社会保険料アップにさらされ続けてきた。消費税率は、当初の3%から段階的に上がり、今秋には10%に引き上げられる予定。年金制度を維持するため、厚生年金の保険料率も上がっており、平成十六(二〇〇四)年からの十三年間で約5%上がった。

 デフレ脱却の遅れもあり、給与も抑えられている。国税庁の統計調査によると、民間の平均給与は九年の約四百六十七万円をピークに下落。リーマン・ショック直後の水準からは持ち直し基調にあるが、二十九年時点で約四百三十二万円だ。現役世代の減少などに応じて、年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」も導入され、受け取れる年金額も抑制されている。

 九年は山一証券など金融機関の破綻が相次ぎ、終身雇用や年功序列の崩壊も印象づけた。それから十年ほどすると、雇用形態が不安定化して中間層が減り、「格差」という言葉が盛んに聞かれるようになった。

 デフレの影響で金利も下がり続けた。バブル時代には2%あった普通預金の平均利率は現在、0・001%まで低下している。このため、老後に備えて貯蓄だけでなく、投資にも目が向けられている。

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