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【暮らし】

<家族のこと話そう>祖父のすごさ 同じ道で 喜劇俳優・藤山扇治郎さん

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 母方の祖父は喜劇役者の藤山寛美、伯母は女優の藤山直美。父が小唄白扇流(はくせんりゅう)の家元という芸能一家で、僕も三歳のときから舞を習っていました。傘などの小道具や着物がいつもそばにあり、芝居が身近な環境で育ちました。

 ウルトラマンのテレビよりも、歌舞伎の映像を見る方が好きでしたね。血かなあ。劇場で演じる役者がかっこよく見えて。自分でも見得(みえ)を切る歌舞伎のポーズをまねて遊んでいました。

 母は専業主婦でしたが、芝居が好きな人でした。高校三年生のときにがんで亡くなりましたが、今、こうして舞台に立っていることを喜んでくれていると思います。

 僕は小学一年生から十六歳くらいまで子役で芝居に出ていました。小三のとき、伯母と一緒に「夫婦善哉(めおとぜんざい)」に出たことがあって。伯母は学校に迎えに来てくれ、手をつないで劇場へ行ったのですが、初めて一緒に舞台に立ち、「ああ、伯母は女優なんだ」と実感した。子どもながらにすごさを感じ、翌日から気軽に手をつなげなくなりました。

 祖父は三歳のときに亡くなったので記憶はほとんどありません。優しくて、電子機器など新しいものが好きだったそうですが、子どものころは「有名な人」という漠然とした印象しかなかった。でも同じ芝居の道を歩く中で、本当のすごさを実感しています。

 祖父は、十人を演じたら十人とも本当に違う人と感じさせられる人。演技の技術は稽古である程度は身に付くけれど、最終的には自分の持っているもので表現するしかない。いろいろな喜怒哀楽の経験を積まないと、それぞれの役の微妙な感情を舞台で表現することはできないんです。

 面白い人を集めてくれば、笑える芝居はできる。でもそれだけでは観客の共感は得られない。祖父の芝居には、笑いの中に感動がある。そういう意味で祖父は神のような存在。同じ役を演じるときはプレッシャーを通り越して、ありがたさしかないですね。

 昨年、元宝塚歌劇団員の北翔海莉(ほくしょうかいり)さんと結婚しました。妻は、客席からの見え方や距離感などいろいろと助言し、相談に乗ってくれます。家族や地域の人と人とのつながりを描いた作品に出ることも多く、ご縁の大切さを感じています。祖父が言っていた「人間は人と人との間にあり、縁をつないでもらって今がある」という言葉を思い出します。元は他人の夫婦が家族をつくり、家族が地域社会をつくる。そういう意味では、周りのすべての人たちを大きな家族のように感じています。

 聞き手・花井康子/写真・岡本沙樹

<ふじやま・せんじろう> 1987年1月、京都府生まれ。2013年、松竹新喜劇入団。NHK連続テレビ小説「まんぷく」など出演多数。出演者が裏方もこなす自主公演の会「若藤会」を主宰する。松竹特別公演「蘭〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜」が東京都立川市のたましんRISURUホール(9月1日)などで上演。

 

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