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【暮らし】

<知って闘うアレルギー>ぜんそく 薬の吸入、舌を下げて

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 国民の約半数が何らかのアレルギー疾患にかかっているといわれる日本。中でもぜんそくは、高齢者を中心に年間千八百人近くが亡くなっている。原因の一つが、患者のほとんどが処方される吸入ステロイド薬の使い方が守られていないこと。藤田医科大教授の堀口高彦さん(63)は、吸入の時に舌を下げれば、より確実に薬が患部に届くことを実験で証明。吸入指導の重要性を呼び掛けている。 (小中寿美)

 「フーッと息を吐き切った後、『ホー』と声に出して言ったら、その口の形で薬を吸って。そうすれば舌が下がりますよ」。三月上旬、同大ばんたね病院(名古屋市中川区)の呼吸器内科。副院長でもある堀口さんが、再診の女性(50)に吸入法を指導していた。女性は、この時期多いスギ花粉の影響でせきが出ている状態。堀口さんは、口やのど元をいろいろな角度から眺め、舌の位置を確認した。

 口から気道に直接薬を届けて炎症を抑える吸入ステロイド薬が広まり始めたのは一九九〇年代半ばから。飲み薬と比べ、体内に取り込むステロイドの量が百分の一程度で済むため、副作用はほとんどない。患者の九割は症状が落ち着くという。ただ、堀口さんが気になったのは、吸入の時に「甘い」と感じる患者がいること。調べると、「甘い」と言う患者に、症状が改善していない例が多かった。

 堀口さんは「舌に薬剤が付いている証拠。舌が口の中で上がった状態になっていて、気道に入る薬の流れを妨げているのでは」と推測。昨年、医師や患者約五十人を対象に実験を行った。まず明らかにしたのは、舌を下げると、気道につながる部分がどのぐらい広がるかだ。内視鏡を入れ、のどの奥の見え方を調べた。それによると、舌を下げた場合、面積は六倍ほど広くなり、動画を撮影すると薬剤もスムーズに流れていった。さらに吸入後、うがいをして吐き出した水に残った薬の濃度を測定。舌を下げない時と比べ、下げた方が粉薬タイプで24%、スプレータイプで55%も低く、薬が効率よく体内に入ったことを証明した。

 これまで着目されていなかった舌を下げる効果について示した三つの論文は、米国のアレルギー学会誌に掲載された。また、実験の結果を受け、日本アレルギー学会が昨年改訂したぜんそく管理の指針には、舌を下げる吸入指導の重要性や手順などが新たに盛り込まれた。

 強い薬を使っても、症状をコントロールできないといった重症患者は全体の5〜10%とされる。「吸入薬を正しく使えないことで重症化する人も少なくない」と堀口さん。もう一つ気を付けたいのは薬の使用を自己判断で中止しないこと。症状が落ち着いても気道の炎症は続いているからだ。薬を使わず炎症を放置すると、少しの刺激でも発作が起きるようになる。死亡に至る人の多くは高齢者で、インフルエンザや、それに伴う肺炎の併発で急激に悪化することもあるため、ワクチンの接種も重要だ。

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<ぜんそく> 慢性的な炎症によって、空気の通り道である気道の粘膜がむくんで狭くなる病気。原因物質(アレルゲン)やたばこの煙などの刺激で、呼吸が苦しくなったり、ゼーゼーヒューヒューという音が生じたりする。患者は国内に800万人以上。

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 さまざまなアレルギー疾患の治療に関する情報や生活上の注意、医療機関の取り組みなどを随時紹介します。意見や質問をお寄せください。

 

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