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【暮らし】

<縁のカタチ 外国人と生きる>地域の担い手(上) 力合わせ「ジチカイ」運営

自治会の総会で本年度の会計に決まり、紹介される日系ブラジル人の石岡ミキオさん(右)=愛知県西尾市の緑町住宅集会所で

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 「私がやります」

 四月上旬、愛知県西尾市の県営緑町住宅集会所であった自治会の総会。本年度の会計選出で、日本人が次々と辞退する中、手を挙げたのは日系三世のブラジル人、石岡ミキオさん(56)だ。本年度は、役員十六人のうち副会長と会計など七人を外国人が担う。

 三棟八十五戸からなる同住宅は、入居する六割が日系ブラジル人を中心とする外国人世帯。一九九〇年の入管難民法改正で日系人の単純労働と定住資格が認められたのを機に急増した。

 総会に出席した住民の国籍はブラジルにペルー、フィリピン、中国、ネパールなどさまざま。行事予定や決算などの書類はポルトガル語と英語が交じり、会場では多様な言語が飛び交う。

 自治会費や団地の共益費など住民から集めた現金の管理が会計の仕事。責任や負担が重く、これまでは日本人が担ってきた。だが、高齢化に伴い、本年度はとうとうなり手がいなくなった。九三年に来日し、自動車部品会社で正社員として働く石岡さんは「私がちゃんとやれれば、外国人への信頼も高まり、次の人につながる」と張り切る。

 九二年度から十二年間にわたって自治会長を務め、現在、県県営住宅自治会連絡協議会長の川部国弘さん(67)によると、外国人が増えた当初、文化や習慣の違いから緑町住宅ではトラブルが相次いだ。ごみの分別ができず、ごみ出しの日時も守らない。夜遅くまで騒ぎ、ベランダでバーベキューをする。家賃以外に、共益費が必要なことを理解できない外国人もいた。

 解決策として川部さんが取り組んだのが、外国人を自治会の役員にすること。集金などの仕事を担う各棟の「班長」を、日本人と外国人の二人一組にした。「規則を知り、日本語を身に付ける機会にもなる」と川部さんは言う。集会所はホームパーティー用に開放。市に要請を繰り返して作ってもらったポルトガル語のごみ収集カレンダーを使い、分別の勉強会も開いた。

 一方で、外国人を警戒、反発する声は根強かった。「ここでともに生きていくには、どうしても必要」と何度も議論した。

 日本人の中には、外国人の多さを嫌って引っ越す人も。空いた部屋にまた外国人が入り、ますます多国籍化が進んだ。外国人初の自治会長が誕生したのは二〇〇七年。ペルー人のエルナニ・セーサルさん(51)だ。

 セーサルさんは三十年前に来日。団地に越して来た当初、住民自ら団地の清掃や集金をする「ジチカイ」に戸惑った。だが、力を合わせて住環境を改善する経験を重ねるうち、「住みやすくなり、とてもいい」と思うように。会長の引き受け手がいないと知って志願し、〇九年まで務めた。

 草刈りや防災訓練など、団地には高齢者では難しい力仕事も多く、「外国人の力は不可欠」と現会長の青木忠雄さん(71)は話す。二年前にあった火災時には、三階の部屋に一人でいた足の不自由な高齢の日本人女性を、住民のブラジル人女性が救出した。

 今もトラブルはある。しかし、川部さんは言う。「三十年をかけ、国籍を超えて助け合えるコミュニティーをつくってきた。これからも、みんなで守り続ける」 (山本真嗣)

     ◇  ◇

 四月に改正入管難民法が施行され、今後、地域で生活する外国人が増える。全国で二番目に外国人の多い愛知県の団地では、高齢化が進む地域を支える力として外国人が重要な存在になりつつある。共生に向けて模索する現場を伝える。

 

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