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【暮らし】

<縁のカタチ 外国人と生きる>地域の担い手(中) ごみ分別も「お互いさま」

日系ブラジル人の自治会役員の男性と、ペットボトルのラベルをはがす藤田パウロさん(右)=愛知県豊田市で

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 愛知豊田市の保見団地内にある県営住宅のごみステーション。日系ブラジル人の藤田パウロさん(74)が知人のブラジル人男性と一緒に、各家庭から出されたペットボトルのラベルをカッターナイフではがしていた。ラベルは取って出すのがルール。「ポルトガル語の分別説明書もあるのだが…」。苦笑しながら、手際よく進めていく。

 計二十五棟に約九百世帯が暮らす県営住宅。藤田さんをはじめ、自治会員の七割が外国人だ。日系ブラジル人が最も多い。藤田さんは、日系人の単純労働と定住資格が認められた一九九〇年に来日。周囲のブラジル人も、それ以降にやってきた人たちがほとんどだ。

 外国人が増え始めて三十年近くがたった今、自治会が抱える最も大きな問題は、ごみだ。分別が不十分なものが目立つことに加え、指定された日や場所以外に放置されている例も少なくない。

 藤田さんは、引っ越してきた二十年ほど前からほぼ毎朝、ステーションで生ごみや資源ごみを分別している。全くのボランティア。四階の自宅から、ごみが散乱しているのが見えると直行、午前九時ごろから一時間ほど作業する。ステーション以外に捨てられているごみも集める。

 「外国人がやった」。越してきた当時、分別が十分でないごみ袋があると、日本人の住民から決め付けられたという。「きちんと分別する外国人もいるし、分別をしない日本人もいる。国籍は関係ないのに」

 日本には「背中を見て学べ」という独特の文化がある。藤田さんが働いていた同市内の自動車関連会社でも、職人が手取り足取り教えることは少なかった。しかし、外国人に「言わなくても分かるはず」は通じない。「ごみ問題も同じ」と藤田さん。「反論するより、まずは自分が動こう」とステーションに出向き、ボランティアで分別作業をしていた日本人の男性を手伝うように。丁寧に教えてもらった分別の仕方を、少しずつ住民に広めている。

 六年ほど前からは自治会の役員も務め、月一回の一斉清掃でも先頭に立つ。副会長の島田昭さん(77)は「日本人より、日系人から注意してもらう方が伝わりやすい。『外国人でも、話せば分かる』と思えるようになった」と話す。

 若い世代も動いている。自治会の役員で、日系ブラジル人の会社員、近藤イゴール明人さん(31)によると、同世代の友人が、棟一階の郵便受けのそばにごみ箱を設置したという。郵便受けに入っていたチラシが、その場に捨てられていることが多いからだ。「自分の住むところを、きれいにしたいという思いは同じ」

 ただ問題はまだまだ。各棟の玄関や廊下などの共用部分には、粗大ごみに出さなければならない自転車やベッドマット、洗濯機などが無造作に置かれる。荒れた感じがするだけでなく、通行の妨げになることも。

 四月の改正入管難民法の施行で、今後は中国やベトナムなどアジアからの外国人が増えることが予想される。多国籍化が進めば、文化や習慣の違いによる摩擦が深刻化する恐れもある。

 しかし、藤田さんは前向きだ。「言葉や習慣が違っても、相手の立場に立ち、分かるまで教えればいいし、助ければいい。保見団地がもっと、『お互いさま』の気持ちを持てるコミュニティーになれば」と願う。 (出口有紀)

 

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