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【暮らし】

<縁のカタチ 外国人と生きる>地域の担い手(下) 音楽通じて交流の輪

日系ブラジル人の子どもたちにギターを教える佐藤さん(中央)=愛知県知立市の「もやいこハウス」で

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 四月中旬の夜。愛知県知立市の知立団地にある市多目的交流センター「もやいこハウス」から流れてきたのは、ゆったりとしたギターの音色と、ポルトガル語の明るい歌声だ。団地のある昭和地区出身で、同市福祉課職員の佐藤浩二さん(37)と一緒に、団地や近隣の日系ブラジル人の子どもたちが弦をはじいていた。

 住民の半分以上を外国人が占める同団地で「音楽で交流できる場を」と、佐藤さんが二年前に始めた「昭和☆みんなの音楽室♪」。当初は数人の集まりだったが、ガラス越しに見える楽しげな様子に「自分の子どもにも教えてほしい」という依頼が増加。今は月二回、佐藤さんのほか、団地のブラジル人やミャンマー人が無料で教えている。

 生徒の国籍は日本やブラジル、フィリピンなど多様だ。小学生から高齢者まで幅広い年代が通う。母国の音楽を披露し合うこともあり、講師のミャンマー人マウン・ミョウ・ゾーさん(54)は「いろんな国の人と親しくなれる」と喜ぶ。

 同地区では音楽室に加え、外国人と日本人が共同で野菜を育てる農園や、多くの外国人が参加して市民団体が毎年開く防災イベントもある。

 きっかけは、市が三年前につくった「昭和未来会議」。日本人の高齢化率と外国人率がともに四割を超える昭和地区で安心して暮らせるよう、市民がアイデアを出し合った結果だ。担当職員でもある佐藤さんは「国籍や年代を超え、人と人がつながる場になれば」。

 知立団地は日本住宅公団(現・都市再生機構=UR)が一九六六年に整備。五階建て七十三棟の巨大団地は若いサラリーマンの憧れだった。だが、比較的家賃が安いことから、九〇年の改正入管難民法施行後、周辺の自動車産業で働く日系外国人の入居が急増した。

 団地の自治会では、外国人との共生を目指し、早くから取り組んできた。日本語教室や生活相談、ごみの分別指導、祭りにブラジルのサンバを取り入れたことも。日本語が堪能な日系ブラジル人が役員となり、住民への通訳もしている。

 そうした中、住民の心に影を落とす事件が起きたのは二〇一四年。住民のブラジル人の男が警官の拳銃を奪って発砲、警官を負傷させた。昨年は市内の別の場所で、ベトナム人同士の殺人事件も発生。「外国人=犯罪」と考えてしまう人がいるのも事実だ。

 「ATMで年金を下ろしたいが、外国人が並んでいて怖い」。自治会長の高笠原晴美さん(80)は団地の高齢者から、そんな声を聞く。「災害時には、助けてもらうかもしれないのに…」

 音楽室の活動を通じ、多くの外国人と知り合ったという佐藤さんは「話してみれば、皆、優しくていい人。不安が膨らむのは、顔が見えないから」と話す。日本人同士でも、隣に誰が住んでいるのか分からないことが多い時代。「一人一人の顔が見えれば、高齢者のごみ出しを外国人が手伝ったり、共働きの外国人の子どもの面倒を高齢者がみたりする関係につながる」

 佐藤さんの夢は国籍や世代の枠を超え、ギター仲間や教え子が一緒になって団地の祭りで演奏すること。それは、さまざまな人たちが、心を一つにして地域で支え合う姿と重なる。 (山本真嗣)

 =おわり

 

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