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【暮らし】

<食卓ものがたり>大ぶりふっくら 伝統の逸品 ハマグリ(三重県桑名市)

編み目の入ったかごを使って小ぶりのハマグリを振り落とす星野真澄さん=三重県桑名市で

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 大きくふっくらした身は、かむごとに甘みが口の中に広がる。「桑名のハマグリ」といえば、むかしから知られた高級食材の一つ。江戸時代には将軍家にも献上された。初夏から夏場にかけてが、漁の最盛期だ。

 主な漁場は木曽、長良、揖斐の「木曽三川」が伊勢湾にそそぐ河口域。「淡水と海水がほどよく混じって、この辺りの水は栄養たっぷり。その水を吸って育つから甘さ、柔らかさが全然違う」。赤須賀漁協(三重県桑名市)の漁師、星野真澄さん(68)は胸を張る。

 漁師たちが船を出すのは、夜が明けきらぬ午前五時ごろ。「ウンテン」と呼ばれる小型の底引き網で、岸から五キロほどの浅瀬の底をひっかく。これを十数回繰り返して引き上げると、網は砂の中にいたハマグリでずっしり。

 しかし、これでは終わらない。星野さんは水揚げしたばかりのハマグリを、編み目の入ったかごに敷き詰めて、リズミカルに振るっていく。小ぶりな貝は編み目をすり抜けて、海に戻っていく。採り尽くさずに、来年の分を残しておく工夫だ。漁協は十年ほど前、幅四〜五センチ未満の貝を海に戻すよう定めた。三センチ以下の捕獲を禁じた三重県の基準より厳しいが、「こういう積み重ねでハマグリを守っとるんや」と話す。

 高度成長期の埋め立てなどで干潟がなくなり、全国的にハマグリの産地は苦しんでいる。桑名の年間水揚げ量も、ピーク時の三千トンから一九九五年には一トンを割り込んだ。しかし、稚貝の人工繁殖や人工干潟の造成、一人当たり一日二十キロの漁獲規制などで、ここ数年は百〜二百トン前後に回復してきた。

 目先だけを見れば、自由にもっと採りたい。でも、「我慢せんと将来に残していけん」。そんな漁師たちの思いが、伝統の逸品を後世に引き継いでいく。

 文・写真 添田隆典

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 焼きはまぐりと並んで、定番として愛されてきたのが時雨煮。江戸時代にハマグリの保存性を高めるために考えられた。たまりしょうゆにショウガをきかせた製法で、ご飯との相性がぴったり。土産物としても人気が高く、市内各所で「志ぐれ」と掲げた専門店を見かける。

 明治末期創業の「貝増商店赤須賀店」では、水あめとワインを隠し味に使っている。4代目の服部高明さん(48)は「コクのある風味がプリプリの身によく合います」と話す。100グラム2500円=写真。全国配送も受け付けている。(問)同店=電0594(22)4908

 

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