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【暮らし】

「半介護半X(エックス)」で前向きに 農業、猟師、フットケア…得意を生かして働く

グループホームのおやつの時間、入所者と話す工藤由里子さん(右)=岩手県八幡平市で

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 介護の仕事をしながら別の分野でも働く「半介護半X」という生き方が、注目を集めている。「X」は、自分の好きなものや得意なことでもいい。介護との両立は大変そうに見えるが、実践者に聞くと、「両方とも大切なライフワーク」と前向きな答えが返ってくる。人手不足に悩む介護業界の一助になるだろうか。 (五十住和樹)

 三月に東京で開かれた、介護や福祉のこれからを考えるイベント「おいおい老い展」で、参加者が「半介護半X」を取り上げた。

 富山県高岡市のケアマネジャーで社会福祉士の畑野充則さん(45)らのグループは各地で活動する実践者を紹介。「X」は猟師(長野県男性)、フットケア(富山県女性)、酪農(北海道男性)、ミュージシャン(福井県男性)と多彩だ。

 畑野さん自身もこの春から実践者となった。老人保健施設やデイサービスなどで通算約二十年、介護の仕事を続けてきたが、四月に実家で訪問介護などの事業所を設立。同時に「腰を痛める人が多い介護職のため、整体の技術を生かしたい」と、整体院も設けた。

 岩手県八幡平(はちまんたい)市の高橋和人さん(57)も実家を改装して介護施設を開き、親から引き継いだ農地も活用する。「人材不足の介護、後継者不足の農業。半介護半農は地域の介護と農業を生かす一つの道だと思う」

 高橋さんが理事長と統括施設長を務める施設は、デイサービスやグループホームなど五つ。計約二ヘクタールの水田と畑を持ち、コメや約三十種類の野菜を減農薬で育てる。利用者も農作業を手伝って各施設で食べたり販売したりする。利用者は農村で生きてきたお年寄りが多く、一緒に農作業すると元気になるという。

 職員約五十人のうち自宅で農業もするのは十人。午前中は介護、午後からは農作業といったふうにシフトを組んで両立している。

 グループホームの介護職員、工藤由里子さん(65)は午前六時半から十一時半まで施設で朝食や入浴介助を行い、午後は田んぼや畑に出る。「おばあさんがいるからと取っておいたヘルパー二級(当時)が役に立った。作ったコメや野菜がおいしいと言われたり、お年寄りから『ありがとう』と言われたり。両方にやりがいがある。私にはちょうどいい生活」と笑う。

 高橋さんは「規模を広げない農業なら、自分のペースを保って介護と同時に続けられる」と話している。

◆「一人多役」 支え合う時代

 一九九五年ごろから「半農半X」を提唱している福知山公立大特任准教授の塩見直紀さん(54)は、「人口減少時代を乗り切るために、『一人多役』で支え合う世の中にすることは大切」と話す。

 塩見さんが提唱した半農半Xは、持続可能な農業のある暮らしを基本に置き、もう一つは個人の特技や好きなことを追求し世の中に生かすという考え方。「介護をベースにしてさらに自分だけのX、一人一人の個性を生かすような仕事や特技を持てば、相乗効果でもっと豊かな介護ができるのでは」と言う。手品や音楽が得意なら、その特技はお年寄りとの関係を深めるのに役立ち、介護の仕事で幅が広がる。

 中でも農業と介護の組み合わせについて、塩見さんは「自然と触れ合う農で癒やされ、人とつながる介護で癒やされ、自分自身を回復させられる」として、高齢化社会の生き方のモデルになると指摘している。

 

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